「ねえ。君は、眼鏡外す派? かける派?」
誰も居ない僕の部屋で、彼女が唐突に言った。
彼女は僕の幼馴染で、休みや学校が終わるといつも僕の部屋に彼女が遊びに来る。長年の付き合いになる。
だけど今の彼女の言葉は、僕には理解し辛いものだった。
僕と彼女は互いに眼鏡をかけているけれのだけれど。
「外す派かな?」
彼女が言いたいのは恐らく「風呂の中でも眼鏡をかけるのか」と、僕は推測していたが。
しかし。
「それじゃあ、此処で眼鏡外してよ」
「は? 何で」
「いいから」
「……分かった」
僕は訳が分からず、眼鏡を外してみせる。
彼女は身を乗り出して僕に顔を近づけたかと思えば、そのままキスをした。
「……」
それは一瞬の事で、彼女は直ぐに僕から体を離した。
その後でも僕は案外冷静で、眼鏡をかけ直しながら彼女を見詰める。
「……今の、どういう意味」
僕ははっきりと彼女を好きだと言った覚えは無いし、彼女の方からも僕が好きだとは今まで一言も言っていないのに。
「ああ、キスをする時、眼鏡を外すか外さないかていう質問。今日、友達からそういう話題になったんだよね。私、眼鏡かけてるでしょ。君はどうなのかなって思って。そしたら君が外す派だって言うから」
彼女は悪びれた様子も無く、笑っている。
その中で僕は言った。
「それならちゃんと言ってくれないと、困るんだけど」
「ああ……、迷惑だった?」
僕の言葉を聞いて、彼女は顔を曇らせる。
「眼鏡、外して」
「え」
僕は無理矢理彼女から眼鏡を取り外し、今度は僕の方から彼女にキスをしてやった。
さっきよりも長く、深く。
「……」
彼女は抵抗する素振りも見せず、僕に従っている。
僕は唇を彼女から離すと、彼女の耳元で囁いたのは。
「僕はキスをする時は、眼鏡をかける派だ。君の顔をじっくり見たいからね。だから、君が眼鏡を外してくれないと困るんだ」
僕の本音を聞いて、彼女は笑顔を取り戻した。