――久し振りに繭世界での夢を見た。
帝国で発生した竜の子をめぐる事件から何回かの季節が過ぎたある日。
は、とても懐かしい夢を見た。
夢の舞台は、繭世界と呼ばれる世界である。
繭世界はラージュとアム、そして、イストという三人の人物が管理をしている世界でもあった。
繭世界ではレックス、カイル、ソノラ、アズリア、イスラ、クノンといったにとっては馴染み深い人間達のほか、その先で出会う事になるマグナやネスティだけではなく、ライにリシェルに竜の子達、リィンバウムでは最強の力を持つと言われる誓約者のトウヤ達と彼らに従うようについている無色の派閥でオルドレイクの子供だという召喚師のソル達、そして、遥か先の未来から来たというフォルス達――リィンバウムの歴史の中で活躍してきた英雄達が集まった世界でもある。
彼らはイストの手によって繭世界の脅威の存在――放っておけばラージュ達を、繭世界そのものを食らいつくしていくという「意識体」と呼ばれるものを倒すために集められたという。
しかしそれだけなら簡単な話ではあるが、繭世界はそう簡単な話ではなかった。
繭世界にはリィンバウムの英雄達だけではなく、マグナとネスティ、アメルの因縁の相手でもある悪魔のメルギトスまで召喚されてきたのだから。悪魔はメルギトスだけではなく、トウヤとソルが長年追いかけていたという大悪魔――エスクルヴェイグの存在もあって、意識体だけではなく、悪魔を相手に彼らの戦いは日に日に激しさを増していく。
それでもラージュ、アム、イストの三人が混乱する英雄達をまとめて、悪魔達さえも味方につけてどうにかして意識体と呼ばれる得体のしれないものを封じる事に成功した次第である。
その当時のもどうして力を持たない自分が英雄達が集う繭世界まで召喚されたのか分からなかったが、今となっては繭世界だけしか知らなかったラージュ達を外の世界に導く役目をもらっていたのだろうと思った。
ラージュ達はで、自分達もレックス達と同じように外の世界に飛び出していけると気が付いた。
実際、と別れたラージュ、アム、イストの三人は繭世界を出て様々な世界を旅して、結果、また元の繭世界に戻ってきたという。
「で自分達も外の世界に出て行けると分かってからは三人で色んな世界を見てきたけど、だからこそ、この繭世界ももっと良い世界にしたいと思ったんだよ」
「そうね。私達はどんな世界に行けても、私達を生み出してくれたこの繭世界を放り出すなんて出来なかった。それは多分、のおかげで色んな世界を見てきたからだと思うわ」
「私もこれからは私一人の力ではなく、ラージュとアムの二人とも協力してこの繭世界を君達の暮らしている世界と同じように暮らしやすい場所にしていけたらいいなと思っている」
ラージュ、アム、イストの三人は、繭世界で再会した後、に向けてそう語ってくれたのだった。
そして。
繭世界ではマグナ以外にもマグナと瓜二つのトリスという女の子が居て、マグナとは別世界の住人でも同じリィンバウムでマグナと同じようにアメルを守るためにネスティ、マグナの世界ではシルターンのハサハだったのがトリスの世界では悪魔のバルレルを護衛獣にして一緒に悪魔達と戦っていたと話した。
そのトリスという子は実はネスティを想っていて、繭世界から自分の世界に戻り、トリスはネスティと念願叶って傀儡戦争の後に結ばれた、らしい。
らしい、というあやふやになっているのは、が繭世界での出来事を夢の中の話として捉えていて、それは現実では有り得ない世界であると認識しているせいだった。
「久し振りに繭世界の夢を――ラージュとアムとイストさんの暮らしている世界の夢を見たわ」
はレックスが青空学校から家に帰るなり、にこにこと笑顔でそう報告してきたのだった。
現在、は忘れられた島はミスミの治める風雷郷に構えた家にて、その繭世界に再び呼ばれた夢の話を、目の前に居るレックスに聞かせている。
現在時間は昼を過ぎたあたり、息抜きのお茶の時間でもあった。
レックスは帝国での一人目の子供ができたのをきっかけに忘れられた島に戻ってからは、青空学校で教師として活動している。それだけではなくて時にはオウキーニの畑を手伝ったり、授業以外で生徒達と遊んだり、ゲンジに憧れるようにシルターン式の家の縁側でのんびりしたりと、と一緒に悠々自適な生活を送っている。
そうはいっても島より外で有事があったさいはすぐに駆けつけるように鍛錬を続けているのも、忘れていない。実際、傀儡戦争の時は帝国軍のアズリアに協力して欲しいと呼び出されて、内密に魔剣の力を使った事もある。
近年では、帝国領内で発生した人間に不満を持って長い間くすぶっていたはぐれの召喚獣が無色の派閥の残党だというギアンにそそのかされて暴動を起こしたという、いわゆる竜の子事件でも呼ばれていたが、ライ達の活躍があってレックスの出番はなく終わってしまったという。
は内心、レックスの出番を奪ってくれたライに感謝したいくらいだった。そのライも実は、繭世界に招待された一員である。
はレックスとお茶を飲みながら、繭世界での出来事を話している。
「それでね、今になって私達が再び繭世界に呼ばれたんだけど、皆がそこに呼ばれた理由ってのが今より先の未来でトリスとネスティさんの間に子供まで出来たせいだって。正確には、未来のトリスとネスティさんが自分の子供を繭世界の皆にも見せたいって強く願って、それをイストさんが叶えてくれたらしいんだよね。トリスの赤ちゃん見て繭世界に集められた皆も拍手喝采、ラージュとアムとイストさんも初めて見る赤ちゃんに興奮してたわねえ」
「……、それ、夢の話だよね? 夢の繭世界ではマグナとトリスだけじゃなくて、ほかの仲間にもそれぞれ対になる女性版が居るんだっけ」
レックスは頭を抱えながらも、の話を茶化さず真剣に聞いてくれている。
「うん。前に話したと思うけど、夢の繭世界ではマグナとトリスだけではなくてライ君に対応しているフェアという女の子が居るし、フォルス君の対のアルカとか、私達の知っている無色の派閥のオルドレイクの子供達もソル一人からカシス、クラレット、キールと四人に増えてて、それで彼らと同じようにレックスとレックスの女版のアティも居たわね」
「繭世界の俺の女性版のアティは、凄いおっぱいの持ち主なんだっけ?」
「そうそう。夢の世界でのレックスの女性版のアティは、こう、凄いおっぱいの持ち主で、そのせいかどうか分からないけどカイルさんもそのアティにデレデレだったわ」
言っては、アティのおっぱいの大きさを自分の胸と両手を使ってレックスにも分かるように話した。
アティのおっぱいのサイズは、の倍以上はあった。
――確かに凄いおっぱいだな……。レックスはでアティのおっぱいのサイズが分かり、苦笑する。
続ける。
「カイルさんだけじゃなくて、その繭世界に集う男の人は皆、アティに釘付けだったかな。マグナもあのネスティさんもその一人で、私やアメル達も、アティじゃ仕方ないって諦めてたくらいだからね」
「うわー、いくら女性版であっても、俺と同じ顔した人間がカイルやほかの男に言い寄られる場面、想像したくないね……」
レックスは本当に、いくらおっぱいが大きいのが自慢の女であっても、自分が男達に言い寄られる場面を想像して気持ち悪くなったという。
「ええとね、アティの名誉のために言っておくけど、アティはおっぱいだけの女じゃなくてレックスと同じように教師やってるくらいに賢くて、レックスと同じように武器も魔法も凄くて、何より、レックスと同じように優しくて親しみやすくて彼女の生徒になってた竜の子達や召喚獣の子供達にも人気あったんだから」
「ああ、それは分かってるよ。おっぱいだけでマグナやネスティもアティに寄り付かないだろうというのはね。そうだな、その部分は俺と変わりないか……」
レックスはの話を信じるよううなずいて、自身を落ち着かせるため、お茶を一口。
そして。
レックスは肘をついて、面白くなさそうに話した。
「というかさ、夢の話とはいえ、繭世界の住人のイスト達の力でそのトリスとネスティの赤ちゃんを見るためにが再び繭世界に招待されたのに、俺は何で招待されないのかな」
「多分、目の前のレックスは繭世界とは別のレックスだからじゃない? 別世界のレックスはちゃんと繭世界に招待されてたわよ」
「なるほど。別世界の俺はちゃんと繭世界に招待されてたのか……。て、ちょっと待て、はそこで別世界の俺とまた関係持ったんじゃないだろうね?」
「……」
「?」
にっこり。笑顔で迫ればは弱った様子で、レックスに白状する。
「いや、その、目の前のレックスとは別世界のレックスでも、レックスと同じ顔で同じ性格で同じ強さ持ってるんだから少しくらい……、やっぱり駄目?」
「全く。同じ俺でも別世界の俺は、目の前の俺とは別物だろう、それ考えれば少し気分はよくない、かな。も、たとえ同じ顔で同じ性格の自分でも、別世界のが目の前の俺と付き合うとなれば気分はよくないだろう?」
「……そうよね。ごめんなさい……」
は、いくら同じ顔で同じ性格で同じ強さを持っているとしても、目の前のレックスからすれば別世界の男と関係を持っていると分かれば気分は良くないだろうと思ったので、素直に謝った。
多分、もレックスの言うよう、自分と同じ顔で同じ性格で同じ無力な自分でも別世界の別人物であるには変わりなく、その彼女が目の前のレックスと関係を持ったと分かれば、複雑だと思ったせい。
それでも。
「でも、繭世界で目の前とは違う別世界のレックスもその後、私と同じ子が現れて、今ではその子と暮らしてるって話してたわよ」
「へえ。繭世界から目覚めたばかりのもそういえば、繭世界を食らいつくしていた意識体を倒したご褒美で別世界の俺の前にもが現れるかもしれないって言ってたな。それ、成功したのか」
「別世界のレックスの話だと、成功したみたいね。でも、繭世界では別世界の私の姿はなくて、別世界のレックスもそれ分かったうえでもう一度私と繭世界を歩きたいって言ってくれてそれで……」
「そうだな……。別世界の俺にもがついてくれていて、別世界の俺と目の前のとで繭世界をデートしたくらいならそこまで追及する話じゃない」
「ありがとう……」
そう。はただ、繭世界では別世界のレックスともう一度繭世界をデートしただけで、目の前のレックスに遠慮するかのよう、それ以上の関係は持っていない、と、思う。は目の前のレックスが自分の話を信じてくれて、嬉しかった。
それ以前に。
「まあ、それよりも前に別世界のレックスも今の私が三人の子持ちだって分かってからは、前みたいに積極的に私に言い寄るなんて事なかったわねえ」
「それはそうだ。俺との間にすでに三人の子供が居る時代のが繭世界に呼ばれたというなら、普通の男なら遠慮するよな」
そう。
今、現在のが繭世界に召喚されたという事は、目の前のレックスの間に三人の子供が産まれた状態のが呼ばれたという事になる。
「でも繭世界では現在の記憶を持ったと違ってカイルやアズリア達は、昔の若い頃の姿を保っていて記憶も当時のままだったのか?」
「そう。繭世界では私の知っているカイルさんとアズリアさん達は、昔の――この島でオルドレイク達と戦ってた頃の姿のままだったわね」
しかしカイル達は年齢は繭世界の当時のそのまま――オルドレイク達と戦ってようやく忘れられた島を出た時のままで、顔も数十年の年を取っている風には見えなかった。カイル達だけではなく、ライとフェア、ナツミやカシス達も当時の姿を保ったままだった。
「も姿はその当時のままだったけど、記憶は今の――三人の子持ちのだったのか」
「そうそう。私だけどういうわけか、トリスとネスティさんにあわせるよう、現在の記憶を持ったまま若い頃の姿で繭世界に召喚されてたのよ」
も見た目はレックスと忘れられた島を出た当時――十代の少女で変わりなかったが、記憶だけは現在の――三人の子供を育てている最中でレックスと夫婦として暮らしているだった。
は言う。
「まあ、今の私もレックスの魔剣の影響で、その頃と変わらないんだけどね」
「俺もこれだけは魔剣の力がにも効果あって良かったと思うよ」
はレックスと十年以上の年を重ねていったが、今でも若い頃の姿を保っている。これも魔剣の魔力と、この島の泉の魔力が影響しているせいらしい。
「私ね、赤ちゃんの世話は思ったより大変だっていうトリスにアティやアズリアの大人達より、竜の子達の世話してるフェアより、赤ちゃんの扱い上手いわねって褒められて、それで実はもうレックスを相手に三人産んでて上の二人の子はもう成人して手が離れた状態だって告白すれば全員驚いてたわねえ」
はその時の全員の顔を――特にラージュとレックスの二人の呆気に取られた顔を思い出し、くすくす笑う。
「イストさんによれば私は皆と同じように姿は当時の若い頃のままだけど、記憶は現在の私に――アメルとマグナ達に世話になってた頃の記憶がある状態に上書きされてるって。最初は皆もそれがわけが分からなかったけど、ネスティさんによれば『多分、マグナ達よりも未来から来た自分とトリスの歴史の埋め合わせに私の記憶が選ばれたんじゃないか、私だけはリィンバウムの歴史に影響を与えないせいでそれが上手くいったんじゃないか』だって」
「なるほど。ほかの人間はリィンバウムの歴史に影響を与えるせいでネスティとトリスにあわせるように未来の人間は呼べなかったけど、歴史の影響を受けない一人だけならそれが可能だったわけか」
ふむ。レックスはのいうネスティのその説には納得したよう、うなずいた。
それからは落ち着いた様子で、繭世界のレックスの話を目の前のレックスに教える。
「繭世界のレックスも私のそれ知って凄く驚いた後に冷静になって、『自分も自分の世界の私との子供欲しい、自分の世界に帰ったら私とそうなれるように頑張る』って話してた」
「うん、別世界の俺のその話に関しては、俺も応援しよう。がもしまた繭世界に召喚されるような事があればそれ、別世界の俺に伝えておいてくれるか」
「分かったわ。次に繭世界で別世界のレックスと会うのが楽しみね」
はレックスの優しい言葉を聞いて本当に、次に繭世界に召喚される日が来るのが今から楽しみになった。
「それで」
それで。
レックスは今度は、を興味深そうに見詰めて聞いた。
「それで現在のが繭世界に呼ばれてネスティとトリスの赤ちゃんを見たという事は、その繭世界ではこの世界の住人だっていうマグナとアメルの赤ちゃんも見てるのかい?」
「いえ、繭世界でマグナとアメルの間にまだ赤ちゃんどころか、繭世界のアメルは夜に二人きりになってもマグナが中々誘ってくれないって愚痴ってたわね……」
「まあ、アメルは元でも聖女だからなあ。マグナがそのアメルに手を出しづらいってのは分かるかな。前、マグナ達がこの島に来た時にどうやってアメルを誘えば良いか分からないって相談された事もあったな」
レックスは、忘れられた島でマグナ達と再会した時、マグナから聖女のアメルをどうやって誘えば良いか分からないと相談された事があり、それを思い出して苦笑する。
「繭世界のアメルは、ネスティさんと赤ちゃんを抱えるトリスを羨ましそうに見てたのも知ってるけど……、でもそうね、繭世界のトリスとネスティさんが上手くいったというなら、この世界のマグナとアメルも上手くいってるんじゃないかしら?」
「そうだと良いけどね。今になってがそのトリスとネスティの繭世界の夢を見たっていうからには、この世界のマグナとアメルにも何かしら進展があるとみてるんだけど、どうかな」
「私もそう思いたいけど、でも、竜の子事件で私達が一度聖王国に行って以来、マグナ達からは何も連絡ないわね……」
は竜の子の事件で無色の派閥の残党であるギアンと彼に従う妖精のエニシアの力は帝国軍にとっても脅威であるので、レックスを使いたいという帝国軍のアズリアからの申請があって、一度、家族で島を出て聖王国まで出かけ、マグナ達に会いに行った事があった。
しかし、レックスと聖王国経由で帝国領に入る前にアズリアから「すまない、竜の子事件はライという少年によって無事に解決した。ライのおかげで、我々の出番はなくなった。暇になったレックスはとその娘達とで、懐かしの聖王国を観光してきたらどうだ。丁度、マグナ達の所にクノンを派遣していると聞いた、その件でファミィ・マーンとの話し合いも必要だろう?」と、反対に聖王国を見てくるように提案されてしまったという。
アズリアの話しているように丁度、クノンとマグナ達との件でファナンをまとめる議長であるファミィと話し合いをしておかなければいけなかった。
はアズリアの言う通りにレックスと娘達とで懐かしい聖王国をデートして、ファミィに会うついでにそこでマグナ達の時代ではとても世話になったが、元の時代の帝国に帰ってからはさっぱりだった、たこ焼き屋のおじさんとも再会できたのは良かったと思っている。
はお茶を一口飲んで、話を続ける。
「マグナはレルム村に派遣したクノンによれば帝国でのライ君の竜の子事件以降、再びはぐれの召喚獣が人間に反乱を起こさないよう、彼らのために受け入れる村を作らなくてはいけないと奮起して、レルム村に本格的に移住を決めて、アメルと暮らし始めたのよね。そしてそこでアメルと一緒に畑仕事もやり始めて、その様はまるで長い間連れ添ってきた夫婦のようだってクノンから報告聞いてるわ。マグナ達を頼ってレルム村まで来たはぐれの召喚獣達からも二人は評判良いらしいじゃない」
「ああ、俺もそれクノンから聞いてるよ。マグナは帝国で起きた、今まで人間に不満を持っていたはぐれの召喚獣達が、無色の派閥の残党だというギアンにそそのかされて人間達に向かって反乱を起こしてそれでライの竜の子が狙われたっていう事件を聞いてレルム村の再建にやる気を出したようだね。それで、レルム村の再建のためにマグナとアメルの所に派遣したクノンもそこに住み着いて診療やってるらしいけど、ライの竜の子事件以降、何回か季節は過ぎてもそれから二人の関係はどうなってるかは聞かないなぁ」
「二人の関係が気になるようなら、クノンじゃなくて、マグナについてるクレアに聞いてみる? クレアは、師匠のマグナがレルム村に移住してからも、マグナからの任命を受けてレルム村でのはぐれの召喚獣の管理を任されてるから、二人の事はよく知ってると思うけど」
クレアというのはの二番目の子供で長女であり、以前は帝国軍のアズリアについていたが傀儡戦争以降はメイメイの紹介で蒼の派閥に入門し、忘れられた島でマグナ達と再会した時、母親のからマグナの活躍を聞いてそれに興味を持ち師事するようになり、彼の弟子として、聖王国の各地を回っている――というのは過去の話で、現在はの話しているよう、師匠のマグナの任命を受けてレルム村ではぐれの召喚獣の管理を任され、張り切っているようだった。
ついでに一番上の長男のアーサーはクレアと同じように帝国軍のアズリアについていたが同じく忘れられた島でマグナ達の再会をきっかけに、誓約者のトウヤと彼についているソルに興味を持ち、アズリアから離れて彼らが属する自警団の一員となった。
三番目――まだ幼い次女のリリィだけがと同じく忘れられた島に残って、こことは違う別の部屋で昼寝中である。
レックスはの提案を聞いて、それを断った。
「いや、クレアのせいでマグナとアメルがお互いを気使って余計にこじれたら悪い。今は報告を待つしか――ん、何だ、通信機から連絡が入ってるぞ」
「あら、クノンとクレア、どっちから?」
レックスは、棚に置いてある小型の通信機に反応があるのに気が付いた。因みにこの通信機はアルディラが開発したもので、それは島の外で活動するクノンとクレアに通じている。
「クレアからだ。はい、はい、お父さんだよ。どうした? 何か必要なものでもあるのかい?」
「……」
レックスは、長男のアーサーは何処に居てもあまり気にしていないようだが、長女のクレアにはとても甘い。はクレアが相手だと分かってデレデレするレックスに少し不満を持つも、黙っていた。
「――え、それは本当か? ああ、そう、それは信じられない!」
「何? クレアに何かあったの?」
少し間があったあとの驚いた声。これは、ただ事ではない。はレックスの慌てようにクレアの身に何かあったのではないかと、レックスに詰め寄るが。
「クレア、アーサーへ連絡は? 分かった、途中でアーサーを拾ってからそっち向かうよ。現地集合だ。そうそう、クレアは俺達がつくまで何も余計な事をするなよ、いいね?」
レックスはを無視して、クレアと話しを続ける。
……クレアだけじゃなくて、アーサーまで? はクレアだけではなくてアーサーまで必要だと分かり、また聖王国で何かあったのではないか――レックスの力が必要になる戦いがまた起きているのではないかとドキドキしている。
レックスはクレアからの通信機を切った後、興奮した様子でに向けて言った。
「、今すぐ寝ているリリィを起こせ。今から三人で島を出て途中でアーサー拾ってから、クレアが待つ聖王国に向かうぞ!」
「いやだから、何が起きたのか教えて欲しいんだけど!」
レックスはの手を取って、とびきりの笑顔で言い放った。
「マグナとアメルの間に子供が出来てもうすぐ産まれそうだってさ!」
その幸せな便りは、春風に乗って――。