空色チョコレート

 それは、寒くて暖かくて甘い日の出来事。


、居るか」
「ユーステス、あれ、いつ帰ってたの?」
「今さっきだ。団長達、それから、俺と同じ班だったイルザ達も帰ってきている」
「お帰りー、そして、お疲れ様!」

 はグランサイファーにて、ユーステスが仕事から無事に帰ってきてくれたと分かって、嬉しそうだった。

 夜になる間際。

 グランサイファーの仕事で、団長のグランとビィとルリアの三人と一緒に出かけていたユーステスが帰ってきた。今回の依頼で狙撃手のユーステスの力が必要というわけで、グランに呼ばれたという。ユーステス以外にも同じく狙撃手のオイゲンを中心に、イルザとシルヴァ、十天衆のエッセル、彼女についているカトルも呼ばれたようだが、彼女達はの居る場所には姿を見せていない。

 はグラン達だけではなく船長のラカムが不在の時は預かり先で色々やっているが、今回のよう、グラン達が留守でもラカムとその他の仲間達がグランサイファーに居残っている場合はもグランサイファーでのんびりと過ごしている。

 ところで。

「ところでは――お前達は、此処で何やってるんだ」

 ユーステスはの居る部屋を見回し、以外にもそこに集まっている人間達を見て呆れた様子で言った。

 が居る場所、そこは。

「イオちゃんとムゲンと、いつものおこたみメンバーの子達とで、こたつでぬくもってるんだよー。ユーステスもどう?」
「……、俺が女子供の中に入れるか」

 が居る場所は冬になれば出現するという、こたつ部屋だった。こたつにはだけではなく、イオ、そして、ルナール、ミラオル、ザーリリャオー、メリッサベル、マキラのいつもの「おこたみ」メンバーの姿があった。

 はイオと一緒で、おこたみの常連でもある。

 しかも今回はそのメンバーにとイオだけではなく、一名、増えている。それは。

「今回は私達だけじゃなくて、ムゲンも居るからユーステスも大丈夫だよ!」

 が指差した方向には、確かに、ムゲンの姿があったがしかし。

「ムゲンはいいが、あいつ、こたつからはみ出て隅に追いやられてるじゃないか。それでいいのか」

「ムゲン、此処でも十分、あたたかい。気にするな。ユーステス、入れば、喜ぶ。入ればいい」

「お前に誘われるのはいいが、まだ仕事が残ってる、遠慮する」

 ムゲンに誘われるもユーステスは、それを丁寧に断った。

 と。

「こたつだけでも十分だと思うが、暖房がきいている部屋の中でアイスか。贅沢だな……」
「ふふふ。ユーステスも暖房がきいた部屋でこたつにアイス、これ味わったらもう、此処から出られないよ」

 ユーステスは、達の手にアイスがあるのを見逃さず、こたつだけではなく、暖房がきいて十分に暖かい中でアイスという冷たいものを食べる贅沢な達を見て、再び呆れる。

 ところで。

「それでユーステス、艇に帰ってきてもまだ仕事残ってるって何で? 団長さん達、ユーステス使って何やってるの?」

「ユーステス君の今の仕事というと、組織内ではなくて、今回はこの艇の団長さんの頼みでそのへんを飛んでる鳥類やそのへんうろついてる動物の狩りやってたんですよね?」

 グランでもユーステスを使い過ぎではとそれを心配するに捕捉するよう話したのは、マキラである。

 ユーステスはマキラにうなずいて、現在の仕事をに説明する。

「マキラの言う通りで、も知ってると思うが団長達は今夜のイベントのために艇の仲間達にご馳走を用意すると張り切っていただろう。ルリアも今回の仕事を聞いていつも以上に張り切っていたな……。俺達、オイゲンを中心とした狙撃班以外にもウェルダーとメーテラを中心とする弓班、カタリナとヴィーラを中心とする剣の班も呼ばれていたから、けっこう大がかりな狩りだった。食糧庫もそれでいっぱいになった」

「そうだった。私もそれ、団長さん達から聞いてたよ。あれ、でも、ルリアちゃんだけではなくてカタリナさんとオイゲンさんもその狩りに参加しているのに、イオちゃんはそれに参加しなくて良かったの?」

 は、自分と同じように艇に居残ってこたつでぬくもっているイオを心配する。

 イオは頭をかいて、自分が居残っている理由を話した。

「あたしの強力な魔法は、狩りに向かないんだよね。あたしの得意な範囲魔法だと一点集中が無理で、必要な獲物まで吹き飛ばしちゃうからさー。団長もカタリナ達もそれ分かってるから、あたしを置いてったんだよ」
「イオちゃんの魔法なら確かに、必要な獲物も吹き飛ばしそうだね。ああ、それで狩りにユーステスと同じ狙撃手のラカムさんは参加しなかったんだね」

 は、今回の狩りにイオだけではなくて狙撃手のラカムが居残っていたのは、それで居残るイオを気遣っての事だったのだろうと、改めて思った。

「それより今夜は、あるイベントのために大がかりな狩りやって、それで艇の皆にご馳走ですか? 楽しみですね!」
「ご馳走楽しみ、でもあるイベントって何だろうね」

 ご馳走、と、聞いて、ザーリリャオーとメリッサベルも浮かれる。

「ふふん、皆、お子様ねー。今夜のイベントが何か、知らないなんて」
「そうね。今夜のイベントの主役はクリスマスの時と違って私達ではなくて、大人達が主役だからね。私はもちろんだけど、このイベントには、イオも関係ないでしょ?」
「そういうミラオルは今夜、何のイベントやるのか知ってるの?」
「今夜は、団長を中心に、団の男女が意中の相手にチョコレートを贈りあうバレンタインイベントでしょう」

 イベントを知らないザーリリャオーとメリッサベルを鼻で笑うのはイオで、その彼女を冷めた目で見詰めるのはミラオルである。

 ミラオルの言う通り今日は二月十四日、世間でいうバレンタインデーだった。

 ミラオルは言う。

「私はそれのせいで恋人の居るジュリエットやアリーザがそわそわしてるの知ってるし、男達の間で人気の高いカタリナを筆頭に、ヴィーラやタヴィーナ、レヴィオン騎士団の三姉妹目当てに『今夜は彼女達から何かあるかも』って、団の中の普段は独り身の男達が浮かれているのも知ってるわ。その反対で、イケメン騎士が多い白竜騎士団に色仕掛けを企む女達が多いのもね。そんな彼らと違って恋人も居なければ誘う相手も居ない私達は――特にイオには関係ないイベントよね?」
「うぐっ、確かに恋人居なくて誘う相手も居ないような、あたし達には関係ないイベントだけど、何も無いあたし達でもこの騎空団の人間ならそのイベントに参加できるんだから、ミラオルも参加しなよ。それに参加するだけで団長から美味しいチョコレートもらえるんだからね!」

 ミラオルに負けず、イオも言い返す。

 と。

 イオとミラオルのやり取りを聞いていて、ある事を心配するのはムゲンである。

「団長から美味しいチョコレート……。イオみたいに誘われる相手も恋人居ないムゲンもそれに参加すれば、団長からチョコレートもらえる?」
「あたしを恋人や誘われる相手が居ない寂しい人間代表みたいに言うのは止めて!」
「それで、どうなの?」
「ムゲンのぶんもちゃんとあるって、そこ心配しなくていいよ」
「良かった。あ、まだ寝てるネハンのぶんも、あるかな」
「ああ、ムゲンが本当に心配してる部分はそこか。寝てるネハンのぶんも、団長に頼めば用意してくれると思うよ。そのへん、団長はぬかりないからね」
「良かった。団長からのチョコレート、ネハンも喜ぶ」

 イオに言われたムゲンは、ほぅと胸を撫でおろした。

「今日のバレンタインイベントに来られる艇の仲間限定といっても多分、多く見積もっても百人以上は来てると思うわよ。それで一人一人にチョコレート用意できるなんて、さすがグランサイファーの団長さんよね。多分、シェロさん経由でしょうけど、それでも普通の騎空団では真似できないわよ。シェロさんと親しい間柄じゃないとねえ」

 グランの行動力と人脈に感心を寄せるのは、ルナールである。

 そして。

 皆の会話が一息ついた所で、ユーステスがに向けて言った。

、ファスティバがお前を呼んでたぞ。そろそろご馳走の用意するから手伝えと」
「ああ、今夜のご馳走のために、団長さん達が狩りから帰ってきたらファスティバさん達の手伝いに行かなくちゃいけないんだった。でも此処から抜け出せない、どうしよう~」

 はユーステスでファスティバの用事を思い出すも、こたつに負けてそこから抜け出せなかった。

 はぁ。ユーステスは溜息を吐いた後、だらけるに向けて言った。

、お前、ファスティバの計らいで俺と一緒の班になったんだが、それでもそこから出ないつもりか」
「え、ユーステスと一緒の班? いつものローアインさん達の班じゃないの?」
「今夜のイベントは艇に来てくれた仲間達限定といっても、ルナールの言うよう、けっこうな人数だからな。おまけに、ご馳走目当てにルリア以外の大ぐらいの連中も来てるときた。それでファスティバとローアイン達だけじゃ手が回らんというので、狩ってきた獲物を解体するのにそれが得意の俺とイルザとバザラガとゼタのいつもの組織の四人が選ばれた。ムゲンにまだ仕事が残っていると言ったのは、これのせいだ。もその俺達の班に入ってるぞ」
「嘘、その話、本当?」
「ああ。それだからお前を呼びに、俺が此処まで来たんだよ」
「ふおおお、ユーステスと一緒の仕事と聞いてやる気出た! 私をユーステスの班と一緒にしてくれたファスティバさん、神!」

 はユーステスと一緒の仕事と聞いて、こたつから勢いよく飛び出た。

 それからはユーステスと向き合い、肝心の仕事内容をユーステスに聞いた。

「あれ、でも私、ユーステスと一緒の仕事って何するの? ユーステスと一緒でも、私が獲物とかの解体苦手で出来ないの、ファスティバさんも知ってるはずでは」
「ファスティバはは俺達と一緒でもそれ以外の組織の仲間――ベアトリクスとグウィンの二人と組んで、俺達が解体した獲物を調理用に裁いてそれを仕分ける作業を手伝えと言ってたな」
「解体した獲物を調理用に裁いて仕分け、それなら出来るけど、ユーステス達が狩りで取ってきた獲物って?」
「ヤギ、羊、ウサギ、鶏といった動物系だ。、俺達がそれらを解体した後に調理用に裁くのとその仕分け、出来そうか?」
「うーん、どうかな。ウサギや鶏の小動物系は平気だけど、ヤギとか羊はまだ抵抗あるかも……」
「そうならは、ヤギや羊は実家がレストランでそれで耐性ついてるグウィンか、普段から野生児のベアトリクスに任せたらどうだ。お前は小動物を担当すればいい」
「それが一番無難か。グウィンとベアトリクスに頼めば、ユーステス達が獲物を解体した後に調理用に裁くのと仕分け作業は何とかなるかも」
「決まったら、さっさと此処を出て仕事に取り掛かるぞ」
「あ、そうだ、この仕事頑張ったらそのご褒美に私の特別料理食べてくれるよね? それ食べてくれるってあれば、更にやる気出るんだけど」
「特別料理? 何だそれ」

 ユーステスは最初、が何を言っているのか分からなかった。

 は、ユーステスに特別料理についての説明をする。

「今夜はバレンタインイベントだからね。ユーステスが団長さん達と仕事行ってる間に、ファスティバさん達に協力してもらってユーステス用の特別料理作ってみたんだよー。ユーステス、私がその仕事頑張ればその特別料理食べてくれる?」
「……、別に仕事を頑張らずとも、の作ってくれたものはいつも残さず食べてるだろう」
「そうだけど、今夜はバレンタインだからね。ちょっとした冒険してみたんだよ」
「バレンタイン関連の料理で冒険というと……」
「チョコレートを使った特別料理だよ!」
「……」
「あれ、乗り気じゃない?」
「まさか、それに俺達の狩りに参加しなかったベアトリクスとカシウスも関わってるんじゃないだろうな」
「あ、正解。チョコレート料理、甘党のベアトリクスとカシウスにも協力してもらった」
「……」
「あれ、何で黙るの。ベアトリクスもカシウスも甘党で、それで、各地のチョコレート使った料理も食べ歩きもしてるらしいから、二人の意見も参考にしてみたんだけど」
「おい、それにベアトリクスとカシウスの好物のチョコレートラーメン入ってないだろうな?」
「はは、それはさすがに……」

「……最初にカシウスにチョコレートラーメン提案されて作ろうとしたけど、同じく協力してくれたアイザックさんとグウィンに全力で止められて、作るの止めました」
「お前、アイザックとグウィンがついていて正解だったな。俺は甘いものが苦手で、ベアトリクスとカシウスが求める激甘料理にはついていけんからな。それ、お前も知ってるんじゃなかったのか」
「うん。私もユーステスは甘いものが苦手で、それだけじゃなくてファスティバさんにもユーステスは甘いものが苦手みたいだからほどほどにしておいた方が良いわって助言もらってる」
「それなら、何で俺にチョコレート料理作ろうと思ったんだ」
「今夜はバレンタインだからね。この日になるとユーステスにはいつも団長さん達と同じチョコレートあげてるけど、それじゃあ面白味ないと思って……。今回は丁度、ベアトリクスだけじゃなくてカシウスも居るから、二人は何か面白そうなチョコレート料理知らないかなーと思ってそれで」
「俺は、毎回同じチョコレートで良かったんだが」
「それじゃあ特別感がないじゃないの」
「別に特別感がなくても良いと思うが」
「ユーステスってば、この艇でも外でもこの日になればチョコレート、私以外の女からいっぱいもらってるよね!」
「……、それはただの義理だ。組織の女達も、この艇の女達も、俺にチョコレートを渡す時に日頃の労いだと話していたが。それに、お前にもそれ隠さず彼女達からもらったぶんを渡しているし、イルザ達と一緒にそれ美味しそうに食べていたじゃないか。女達も、お前の存在くらい分かったうえで俺に渡してると思うが」
「そうだけどね。でもユーステスがそう思っても、彼女達がどう思ってユーステスにそれ渡してるかは分からない。それだから、私は彼女達より特別感出したかったの!」
「……」
「それでさ、甘いものが苦手なユーステスでも食べられるようには工夫はしたよ。チョコレートソースを少し添えるだけとか、飲み物に少し入れるとか。これなら、どう?」
「まあ、アイザックとグウィンだけではなくて、ファスティバの助言も聞いているというなら、へんに甘ったるいものじゃないだろう。分かった、仕事が終わればの特別料理、楽しみにしておく」
「やった、ありがとう! それ聞いて、苦手な仕事もいつも以上に頑張れるよ!」

 は、ユーステスの了解が得られて彼に遠慮なく抱き着く。

 と。

「あ、まだアイス残ってた。仕事行くの、これ食べてからでいい?」

 は自分のアイスがまだ残っていたのを見てその勢いはすぐ収まって、再び、こたつに戻ってしまった。

 のそれを見たユーステスは再び呆れるも、彼女を突き放したりはせずに柱にもたれかかる。

「好きにしろ。俺はそこで待ってるから、さっさと食べろ」
「ありがとう。あ、そうだ、はい」
「!」

 ひょい、と。は自分のアイスをスプーンですくったあと、ごく自然に、ユーステスの口にそのスプーンを持っていく。

 ユーステスも抵抗なく、自然とにもらったアイスを口に入れる。

 は期待を込めた目で、アイスを食べたユーステスを見詰める。

「これくらいの甘さは、どう?」
「アイスくらいは、平気だ」
「外は寒いけど暖かい部屋の中で食べるアイス、最高でしょ?」
「……確かに外が寒い中でこの暖かい部屋で食べるアイスは、最高だな」
「でしょ? それから疲れた時に、甘いもの良いんだよ。外から帰ってきたユーステスもちょっとは落ち着いたんじゃない?」
「全く、お前は……」
「えへへ」

 ユーステスはが自分を気遣って甘いアイスを食べさせたのが分かって、それに参ったよう、彼女の頭をくしゃ、と、撫でる。もユーステスに頭を撫でられて、嬉しそうだ。

 そして。

「アイス食べ終わった。もう、仕事に行けるよ」
「やれやれ、やっとか。バザラガはいいが、イルザとゼタを待たせるとうるさいからな、さっさと行くぞ」
「うん。あ、ちょっと待って」
「何だ、まだ何かあるのか」

 は、今まで二人の様子を見守っているだけに徹していたイオとムゲン、おこたみメンバーの方を振り返り、そして。

「皆、美味しいご馳走作るから楽しみにしててね!」

 は、こたつでぬくもるイオ達にそう言い残した後、嬉しそうにユーステスと腕を組んでこたつの部屋を出て行ったのだった。


「全く。あたし達の前でも気にせずイチャイチャしてまあ。今回のバレンタインイベント一番楽しめてるの、とユーステスくらいじゃないの?」
「本当にね。あの二人の前じゃ、ロミオとジュリエットも霞むわ」
「ムゲン、仲良いとユーステス見てると、あたたかい気分になる。早く、ネハンにもとユーステス、紹介したい」

 言い合っていたイオとミラオルもの件では意見が一致したようで笑いあい、ムゲンもにこにこ笑っている。

「でもさんの言うよう、私達には関係無いバレンタインイベントでも、夜に出される今回のご馳走と、団長さんからのチョコレート、楽しみですよねー」
「そうだね。だけど、組織のユーステス達でもわたし達の人数ぶん、狩りで取ってきた獲物を解体してそれ調理用に裁くの大変そうだと思ったし、彼らと一緒にその苦手な仕事を任される、大丈夫かな?」

 ザーリリャオーはご馳走とチョコレートを楽しみにするも、メリッサベルは動物系の獲物を解体するという組織のユーステス達の大変さ、そして、それの処理を任されるの精神状態を心配している。

 メリッサベルの心配を聞いて、彼らの事情をよく知っているマキラは微笑む。

「組織のユーステス君達は、神器と呼ばれる特殊な武器を使って獲物を解体していくので、そう時間はかからないですし、それだからそれが大変な作業でもないですよ。組織の彼らにその役目を与えた団長さんとファスティバは、良い判断をしたと思います」
「あ、そうか、組織の皆が使ってるあの武器使えば獲物の解体早く出来そうだね。でもその武器が使えないはどうかな? 大丈夫そう? わたし達もの手伝いに行った方が良いと思う?」
「ユーステス君とバザラガ君達だけじゃなくて、イルザ君はもちろん、ゼタ君達をはじめとする組織の女性達もそれくらいの訓練を受けていて、もそれができなければユーステス君についていけない事くらい分かっているし、もし、がそれで気分悪くなったとしてもユーステス君がちゃんとフォローしてくれるでしょうから、そこらへんは心配ないですよ。それから、私達がの手伝いに行くよりも、いつもの組織の仲間達と仲良くやる方がにとって良いかと」
「そうか。わたし達が手伝いにいくより、いつもの組織の仲間達と仲良くやった方がにとっては、その方が良いね。それからが苦手な仕事でもユーステスと一緒なら出来るの、これも愛の力ってやつかな?」
「です!」

 マキラは自信たっぷりに、メリッサベルにうなずく。

 と。

「そういえばさっきからルナールが大人しいけど、どうした――て、ルナール、ルナールしっかりしなさい!」
「はっ!」

 ミラオルはさっきからルナールが一言も発しないのを心配して彼女の方を見れば気絶していたようで、慌ててルナールを叩き起こした。

「さっき、が私達を気にせず自然にユーステスさんとイチャイチャしてるの見て、更にが自然とユーステスさんに自分のアイス食べさせるの見てそれにトドメ差されて、無事に死んでたわ!」
「ああ、やっぱりそれで……」

 それからルナールは自分を心配するミラオルに構わず、こたつから勢いよく飛び出る。

「ユーステスさんって私達の前では冷たいのに変わりないけど、の前だけ優しい笑顔見せるのよ! それ、凄く良いわー! あとあの二人のイチャイチャぶり、その光景を忘れないうちにスケッチ、スケッチ! あ、そうだ、今夜のバレンタインイベントでとユーステスさんだけじゃなくて、ロミオさんとジュリエットさんとか、アリーザとスタン、ユーリとファラ、ノイシュさんとスカーサハの観察も捨て難いわね! あ、いつもの白竜騎士団のイケメン騎士達の観察も忘れないようにしなくちゃ! 今から忙しくなるわー、こたつでぬくもってる場合じゃないわ、ゴリラドリンク足りるかしら!」

「実はこのバレンタインイベントを一番満喫してるのって、ルナールよね……」
「私達、そのルナールさんについていけますかね……?」

「はは、ルナールについてるミラオルとザーリリャオーも、今夜は大変そうだわね」

 はぁはぁ! とユーステスのいちゃつく様子を見て興奮冷めないうちに高速でスケッチを取るのはルナールで、今後のルナールについていけるかどうか不安になるのはミラオルとザーリリャオーで、そのザーリリャオーとミラオルに同情を寄せるのはイオだった。

「外は寒いけど部屋はあったかい、ムゲン、この艇の人間、好き。ネハンも早く、この艇の仲間に入れるといいな」

 ムゲンはそんな彼女達の様子を、あたたかい眼差しを向けて見守っていた――。

グラブル、空シリーズ第四弾。
お馴染みバレンタインネタ。
ただ単純にこたつでアイス、そして、そのアイスをユーステスに食べさせたいだけに仕上げた作品。
カシウスとアイザックが月から帰還した後の話。ムゲンも登場してるけどまだネハンは寝てる状態。
細かい時系列についてはあまり考えないように~。

更新履歴:2022年02月18日