長峰 理絵(一年五組)
佐々木 護(一年五組)
上記の者、両者本人確認の上、正式に恋人同士であると認める。
十月。
二ヶ月に一度、職員室横にある掲示板に一枚の学校新聞が張り出される。
学校新聞の前には待ちかねたように九割近くが女子生徒達で、場は輪になるように溢れていた。
彼女達の目当ては、新聞部が「本日の恋人紹介」というコーナーである。新聞が発行される前に恋人になった生徒達の名前が出されている、一つの企画ものだった。
今回の目玉は長峰理絵と佐々木譲の二人であるというのは、輪となって話している彼女達の会話からも見て取れた。
「あー、やっぱり長峰さんと佐々木君、付き合ってるって!」
「やっぱり? あの二人、夏休み明けてから怪しいと思ってたんだよねー」
「えー、私、佐々木君狙ってたのに」
「あんたじゃ無理だってー」
「いやいや、前から二人の噂はあったのよ。だって野球部部員とそのマネって言ったらほら、定番でしょ」
「うんうん、長峰さん美人だしねー」
「佐々木君もカッコイイし、何より高校野球の夏季大会でも彼のお陰でいい所まで行ったしね」
「それで佐々木君狙ってた子、増えたでしょ。私もそうだけどさー。これで発表されたら佐々木君に手が出せなくなるじゃん」
「本人達にしてみればその効果があるし、良かったんじゃないの。でもいいよねー。お似合いでさー」
「ああ、それで納得って言うか、佐々木君に長峰さんだったら諦められるわね」
女子生徒達の間からは、悲嘆とも感嘆とも漏れる声がその輪の中に居た彼女の耳にも聞こえている。
彼女は一人、メモ帳を手にして女子生徒達の輪の中に居た。今時珍しく三つ編みに結っている髪。化粧っ気も無ければ美人と言うには程遠い、普通の顔。お陰で彼女に注目する女子生徒は皆無だった。
「でも良く長峰さんがこれに名前載せたよね。嫌がってたようにも見えるけど」
「佐々木君の押しもあったせいもあるけど、その裏ではある新聞部員が暗躍していたらしいって話だけど」
「何、そのいかにも怪しげな話は」
「私も聞いた話だから分からないよ」
三つ編みの彼女は別の方から聞こえて来た女子生徒達の話に、ほくそ笑む。
「次、名前載るの誰だろうね」
「あの二人かな。ほら、幼馴染同士でいつも一緒に居る」
「あー、一年の白木さんと高橋君か」
「怪しいよね」
「新聞部だったらあの二人にもう目、付けてるんじゃないの」
ぎゃはは、と笑い声に混じって聞こえて来た貴重な情報を、彼女は逃さなかった。手にしていたメモ帳を開いて、慌てて彼女達の話に出て来た名前とクラスを書き取った。