空のパレード(01)

 ――ユーステスさんのエルーンの耳は、エルーンの中でも美しいと思いました!

 それは、初めて出会って今まで変わらぬ感情だった。

「もふもふ~」
「……」

 グランサイファーの艇の甲板にて。

 仕事からの居るグランサイファーに帰ってきたユーステスは椅子に座って新聞を読んでいて、その間にはユーステスの背後に回って彼のエルーンの耳を堪能している。

、またユーステスのエルーンの耳で遊んでるの?」
もユーステスさんのエルーンの耳、好きですよね~」

 そこを通りかかったイオは呆れた様子で、ルリアは微笑ましく見ているだけ。

「ユーステスのエルーンの耳、触りがいがあるっていうか、気持ち良いっていうか」

 ひひ。はユーステスのエルーンの耳をいじりながら、その感触を楽しんでいる。

「ねえ、ユーステスのエルーンの耳、そんなに触り心地良いの?」
「うん。上質の毛皮を触ってる感じかな」
「ええ、それじゃ、あたしにもさわらせ――」
「イオちゃんでも駄目!」

 の触り心地を聞いて興味を持ったイオは背伸びをしてユーステスのエルーンの耳に触れようとするも、そこをが止めに入った。

 は腰に手をあて仁王立ちで、イオに立ちはだかる。

「ユーステスのエルーンの耳は、私専用だからね! 私以外の女はお断り!」
「……、イオ相手にそれはないだろう。それに俺は自分のエルーンの耳は別に誰に触られても構わないが」

 の暴挙に、さすがにユーステスも口を挟んできた。

 はしかし、ユーステスにその不満を口にする。

「えー。イオちゃん許せば、その様子を見ていたほかの女もユーステスのエルーンの耳に触りたいって寄ってくるでしょ! それだけは絶対阻止!」
「イオや子供以外、ほかの女は断ればいいだろう」
「いやいや、私の目の届かない所では、ユーステスもそれ断れないでしょ! 私の居ない所でそれ断れる?」
「それは……」
「ユーステスのエルーンの耳に触れていいの、私だけだからね! ユーステスも女の子だけじゃなくて子供がエルーンの耳に触りたいって近づいてきても、油断したら駄目だよ!」
「……」

 ユーステスはの気迫と勢いに押されて、何も言い返せない。

「あー、あたし、別にユーステスのエルーンの耳じゃなくていいんだけどさ……」
「あ、あそこにユーステスさんと同じエルーンのローアインさん達が居ますよ!」

 はは。とユーステスの言い合いの原因になったイオは腰が引けるも、ルリアが丁度良い人材――エルーンのローアイン、トモイ、エルセムの三人が通りかかったのを発見した。

「ローアイン、トモイ、エルセム、止まって!」
「三人にお願いがあるんですけど!」

「「「!?」」」



 それから数時間後。


「団長さん、また十天衆の皆を集めて会議開きたいんだけど協力して――て、何の騒ぎ?」

 十天衆のシエテが十天衆会議のために団長のグランを頼って艇に顔を出せば、甲板にけっこうな人数の団員達が揃っていて、驚いた。

 しかもその中には十天衆会議で招集をかけようと思っていたシス、エッセル、カトルの三人の姿もあった。

 シエテは、十天衆の中でも比較的接しやすいと思っているエッセルに尋ねる。

「あれえ、頭目の俺が呼ばれてないのに何で君達まで艇に来てるの? 俺だけ除け者なんて酷くないかなー。というか君達、俺の知らない間に団長さんの依頼以外でこの艇に入り浸ってるようだけど、何かあるの?」
「今回は、イオの思い付きでエルーン縛りで呼ばれたの。シエテは、エルーンじゃないでしょう?」
「エルーン縛り? そういえば、集まってる人間、うちではエッセルとカトル、シスのエルーンの三人で、それ以外も確かに全員エルーンだな」

 シエテはエッセルに言われて辺りを見回せば、艇に集まっている人間は獣耳がついたエルーンだけというのが分かった。エルーン以外の人間も居るが、エルーンだけで数えれば、二十人は軽く超えている。

「しかもエルーン縛りは団長さんではなくて、イオの思い付き?」
「正確にはイオというよりは、関連ですよ。皆、の呼びかけで集まったんだよ。それから僕と姉さんが団長さんの依頼以外でこの艇に入り浸ってるのは、その目当てですね」
「ええ、エッセルとカトルは目当てで艇に入り浸ってるの? 何で?」
「シエテもと話せば、僕達が彼女目当てに来る理由が分かりますよ」
「それがよく分からないんだが……」

 エッセルの説明だけでは理解不能で助けを求めるシエテに補足するよう話したのは、カトルで、しかし、カトルの説明を聞いてもシエテはそれがよく分かっていない風だった。



 つまり。

「――つまり、イオとルリアはに阻止されたユーステス以外でエルーンの耳の触り心地を試そうとその品評会をやるために、エルーン限定の仲間を艇に呼んだってわけかい?」
「そうです。イオちゃんとルリアちゃんは、いつも艇に居るローアインさん、トモイさん、エルセムさんの三人のエルーンの耳の触り心地だけじゃ私のいうその感触分からないって言うんで、それなら艇の仲間になってくれてるエルーンの皆を集めたらどうかなって私が提案しまして」

 シエテにそう説明するのは、グランとビィの三人と一緒になって列の先頭に立って、艇に来てくれたエルーンの仲間の一覧がある名簿を持って彼らを管理するだった。

 シエテはカトルから「と話せばよく分かる」と言われたので、エルーンの耳品評会でエルーンの管理を任されているという彼女に話しかけた次第である。

 シエテは、の手元にあるエルーンの仲間の一覧が掲載されている名簿を覗き込む。

「それでイオとルリアはこの中で、に上質な毛皮だって評価されたユーステス以外のエルーンの耳に出会えたのかな?」
「どうですかね。この中で半分以上は終わってるんですけど、なんかまだ納得してないみたいですねー」


 とシエテのそばでは、イオとルリアによるエルーンの耳品評会なるものが続けられている。
 イオとルリアの前では椅子が置かれ、そこには列を作ってその評価を待つエルーン達が並んでいた。

 現在はエルモートの番だった。

「はい、終わりー、ありがとね。うーん、エルモートのエルーンの耳じゃ、上質な毛皮っていう感触じゃなかったかも。でも、ふわふわで触った感触はいいわね」
「はい。エルモートさんのエルーンの耳は、ふわふわでしたねー」

「そうかい。自分では自分のエルーンの耳の感触がどうかなんて今まで思った事なかったから、今回のイベントは新鮮で面白かったわ。後でマナリア学園の連中にも、エルーンの耳についてどう思うか、講義してみるか。エルーンだけじゃなくて、ほかの種族――ドラフの角やハーヴィンの耳についてどう思うか聞いてみるのも、面白いかもしれない」

 エルーンのエルモートはイオとルリアにそう評価されるも、今回のエルーン縛りのイベントは楽しんでいる様子で、それを次回の講義に活かせるかどうかを思案中である。

「エルモートさんの次はソシエさんですか。よろしくお願いしますね」
「ソシエのエルーンの耳は、見た目だけで見ればエルモートと何か違う感じがするわね。エルーンの耳にも個体差があったなんて、今回の品評会で初めて知ったわ」

「ふふ、うちらのエルーンの耳がここまで注目されるとは思わんかったわ。お手柔らかになぁ?」

 次にルリアとイオの評価を聞くためドキドキして椅子に座って評価を待つのはソシエだった。ルリアとイオはさっそく、ソシエのエルーンの耳に触る。ソシエはくすぐったそうにしているが、二人がエルーンの耳に触れる事には特に文句はないようだった。

 イオとルリアのエルーンの耳の品評会の様子を見ていたビィは、あくびを一つして、同じく二人の様子を見ているグランに聞いた。

「なあグラン、ルリアとイオ、この調子だと艇の団員になってくれているエルーンの奴ら全員調査する気か?」
「ルリアとイオの様子を見れば、そうなるね。二人とも、自分が納得するまで続けるだろうし、そうなら、この人数だと夜までかかるな」
「うへえ、まだかかるかぁ」
「ビィはエルーンの耳品評会が退屈なら、カタリナとオイゲンの訓練か、ラカムかロゼッタの調査のどっちかに付き合ったらどうかな」
「いやいや、姐さん達の訓練は論外、ロゼッタ達の調査も話が長くなるからな、ここでルリアとイオ達を見ている方がいいぜ」

 ビィはグランの提案を慌てて断り、彼の背後に隠れてテーブルに用意されている菓子をつまむ。

「ビィ、それは此処に集まってくれたエルーンの仲間達のためにルリア達が用意したお菓子だから、ほどほどにしとけよ」
「分かってるって」

 本当に分かってるのかなぁ。グランはお菓子を美味しそうに頬張るビィに呆れる。

 そして。

「それでシエテ、僕に用があるなら今なら聞いてあげられるけど。何かな?」

 ビィとのやり取りを終えたグランは、その間に自分の隣に来てルリアとイオのエルーンの耳品評会の様子を見ているシエテに聞いた。

 シエテは少し考えて、グランに言った。

「いや、いつもの会議をするために十天衆の皆を集めるのを団長さんに協力してもらおうと思ったんだけど、この様子じゃ当分は無理そうだな。団長さんの手が空いた時でいいよ」
「そう? あ、そうだ、僕の代わりになら十天衆の皆を集められるんじゃないかな?」
「え、?」
「忙しい僕に代わってルリアとイオのために此処にエルーンの皆を集めてくれたの、だから。に頼めば、十天衆の皆もすぐに集まってくれるよ」
「へえ、でエルーンの皆が此処に集まったのか? それは凄いな」

 シエテはここでグランからの名前が出ると思わず、彼女をまじまじと見詰める。

 はシエテの視線に気が付いて、名簿から顔を上げて彼を見返す。

「シエテさん、何です?」
「あ、いや、団長さんからが此処に来ているエルーンの皆を集めたって聞いたけど、本当かい?」
「半分は本当ですけど、半分は違いますね」
「半分?」

 の独特な言い回しにシエテは、首をかしげる。

「私の言う事は、ユエル達を見ていれば分かりますよ」
「ユエル達を?」

 シエテは、の言うよう、品評会で並んでいるユエル達を見る。

 その間、ソシエの審査は終わったようだ。

「ソシエのエルーンの耳もやわらかくてふかふかだけど、上質な毛皮って感じじゃないかも~。ふわふわのエルモートと違って、ツヤツヤしたシルクに近い感じかな?」
「ああ、イオちゃんの言うよう、ソシエさんのエルーンの耳はツヤツヤでシルクみたいですよね」
「うち、髪だけではなくて、エルーンの耳も念入りに手入れしてるんや。それの影響でイオとルリアにエルーンの耳がシルクみたいと言われたら、嬉しいやね」

 イオとルリアから「ソシエのエルーンの耳はツヤツヤでシルクのような触り心地」と評価されたソシエは、本当に嬉しそうだった。

「ソシエの次は、ヨウ、ヨウの次がコウか」
「コウさん達の最後はユエルさんですね。がユエルさん達の一族をまとめてくれたのは、良かったですね」

「うんうん。本当、はうちらの一族の中でもうちを最後にしてるってのがまた、うちらの関係をよく分かって、いい仕事するわぁ」

 ソシエに続くのはコウ、ヨウ、ユエルで、の手で妖術使いの一族でまとめられていた。

 はユエル達を指さし、シエテに説明する。

「半分は私の呼びかけに応じて来てくれたんですけど、半分はユエル達のよう、ユエル一人を呼べばソシエ達もついてきてくれるので、半分は自力で半分はそれ頼りでというわけでして」
「なるほど。一人を呼んだら二人来たみたいに、連鎖式に来てくれたってわけか」

 シエテはの説明に納得するよう、うなずいた。

 その間にも次々とエルーンの耳の品評会は進んでいく。

 ユエル達でもイオとルリアの思うような感触ではなかったようだ。

「やっぱ、うちらでもイオとルリアの目には適わなかったみたいやね。でも、うちもイオとルリアにエルーンの耳を触られるんは、悪い気せんかったわ。なあ、今回限りじゃなくて、またエルーンの耳品評会、開いてくれへんか?」
「あたしもユエル姉に同感! 、今回限りじゃなくて、またエルーンの耳品評会開いて欲しいな! それでイオとルリアで誰かにエルーンの耳を触られるのは気持ち良いって分かった! コウ兄、あたしのエルーンの耳、触ってよ!」
「い、いや、僕がヨウのエルーンの耳を触るのはどうかと。それは、ユエルさんかソシエさんに頼んだ方が良いんじゃないかな……」

 イオとルリアに認められずともエルーンの耳に触ってもらうのは悪い気せずに第二回も開いて欲しいとに話しているのはユエルで、誰かにエルーンの耳を触ってもらうのが気持ち良いと気が付いてコウに迫るのはヨウで、ヨウに迫られるもそこから視線を逸らして拒否するのはコウだった。

「ユエルさん達の次は……、ああ、ドランクさんですか」
「ドランクなら調査する必要ないわね。はい、次のエルーン、どうぞー」

「ええ? 僕のエルーンの耳、君達の可愛い手で触ってくれるんじゃなかったのかい?!」

 ユエルの次に椅子に座ったドランクを見てルリアはそっけなく、イオも彼に興味なさそうにあしらうだけで、当人のドランクは女の子に自分のエルーンの耳を触ってもらえると期待して待っていればそうではなかったのでショックで青ざめる。

 ドランクはルリアとイオが駄目ならと、に詰め寄る。

ちゃん、ちゃんだけでも僕のエルーンの耳、触ってくれるよね? ね?」
「いや、遠慮します。ほかいってください」
ちゃんにもあっさり振られた! というかちゃん、意外と冷たくない?」

「ドランク、お前、を甘く見過ぎだ。はユーステスのエルーンの耳しか興味無いというのは一貫しているし、そのがお前のエルーンの耳を触ると思うか。それでが冷たいんじゃなくて、お前がバカなだけだ」

 そう言ってドランクに呆れるのは、何故か彼の付き添いとしてエルーンの耳品評会を見学していたスツルムであった。

「それじゃスツルム殿がちゃん達の代わりに僕のエルーンの耳触って僕のエルーンの耳を評価してよ」
「な、何でアタシがお前のエルーンの耳を触らなくちゃいけないんだ、それこそお断りだ!」
「えー。此処まで来てそれはないよー。女の子にエルーンの耳を触ってもらえるって聞いて期待してたのに。せめてスツルム殿だけでも! お願いします!」
「いい加減にしろ!」

 スツルムに泣きつくドランクと、ドランクがうっとうしくなって蹴りを入れてそこから離れるスツルムと。

「ふふ、ドランクさんもあの様子だと、スツルムさん以外の女に自分のエルーンの耳を触ってもらう気ないんですよね」
「なるほど。確かにドランクは、スツルム以外の女には言い寄ってないな。というかは本当、艇の人間関係をよく見てるねえ」

 シエテは、の話でドランクとスツルムの微妙な関係を知ってそれに納得し、の観察力には感心する。

 それからといえば。

、エルーンの耳の品評会、カトルからの発案って聞いてるけど本当かい?」
「あ、カトル君のその話は本当ですよ。私がユーステスのエルーンの耳を触ってる時にイオちゃんとルリアちゃんがそれに興味持って自分達もエルーンの耳に触ってみたいって言い出して、それなら艇の仲間になってくれているエルーンを集めてエルーンの耳品評会をやったらどうかって、提案したんです」
は、ルリアとイオにユーステスのエルーンの耳、触らせなかったの?」
「それはそうですよ。ユーステスのエルーンの耳に触っていいの、私だけですからね!」
「……、スツルムの言うよう、確かにそれについては一貫してるなぁ」

 何故か胸を張って得意げにそれを主張すると、そのを見て苦笑するしかないシエテと。

 そして。

「そういえばエルーンの耳の品評会で君の組織のイルザは来ているのに、肝心のユーステスの姿が見当たらないけど、彼はどうした?」

 辺りを見回せば組織でエルーンのイルザは艇に来ているのに、肝心のユーステスの姿が見当たらない。

「ユーステスは、自分のエルーンの耳が原因で此処に集まってきたほかのエルーンに、自分のエルーンの耳をルリアちゃんとイオちゃん以外に見比べられるのが嫌だからって、品評会の間は外に出かけるって出かけてます」
「ふむ。確かに自分が原因で此処に集まったエルーン達から自分のエルーンの耳を見比べられるのは、嫌だろうな」

 シエテは、ユーステスがエルーンの耳の品評会の間、艇に居づらくて外に出かけているのは理解した。

 ふと。

 シエテはここでふと、ある違和感に気が付いた。

 それは。

「あのさ、。ちょっとした疑問があるんで聞いていいかな」
「何です?」
は、ユーステス以外のエルーンの耳に触る気ないのかい?」
「ユーステス以外のエルーンの耳ですか? 私、ユーステス以外のエルーンの耳は触る気ないってさっきから言ってますけど」
「今回はエルーンの男だけじゃなくて、エルーンの女の子や子供達も対象になってるだろ? それでも、女子供が相手なら遠慮する必要無いと思うけれど」
「ああ、私、女の子や子供達が相手でもユーステスのエルーンの耳以外は触る気無いですし、何より――」
「何より?」
「何より、ユーステスからも自分以外、女でもほかのエルーンの耳に触る必要無いって止められてますから」
「……それはそれは」

 えへへ。ユーステスからも自分以外のエルーンの耳に触るなと止められていると照れ臭そうに笑うのはで、その違和感に気が付いて顔を引きつらせるのはシエテだった。

 ――はもとからユーステスの独占欲強くてでもそれは表に出してるぶんマシだけど、ユーステスもの独占欲強くてでもそれは表面化されなくて水面下でくすぶってるぶんタチ悪いっていうか。

 シエテはそれが表面化して分かりやすいよりも、水面下でくすぶるユーステスの方が面倒臭いと思った。

 そして。

 シエテは、が自分の方を見ているのに気が付いた。

「それでシエテさん、此処に十天衆の皆を集めたいんですか?」
「ああ。いつも頼んでる団長さんは、エルーンの耳品評会のルリアとイオの付き添いで忙しいようだからね。にそれ、頼めるかな?」
「はい。エッセルとカトル君とシス君はもう此処に集まってるので、それ以外の皆さんを集めるのは私にお任せください。多分、一時間くらいあれば十天衆の皆さんを集められますよ!」
「へえ、大した自信だねえ。君、俺達とやりあってそれを認められた精鋭揃いの団長さん達と違って、武器も魔法も扱えないんだろ? 団長さんでも、俺の仲間を全員揃えるのに半日以上はかかってるんだけど。それでどうやってうちの癖ある人間達を集められるんだい?」
「今回はエルーンの耳の品評会で、最初からエッセル達が来てくれてますからね、一から集める団長さん達の時と違って比較的簡単に終わります。それで一時間で集められなかったら、シエテさんの言う事を一つだけ聞いてあげますよ。私の出来る範囲ですけど」

「言うね。お手並み拝見といこうか」

 ヒュウ。シエテは口笛を吹いて、の自信に満ちた顔を面白そうに見詰める。

 それから。

「団長さん、私の代わりにこれお願いします」

「了解。もし十天衆の皆を集めるのが無理だと思ったら遠慮なく僕に頼ってくれ」
「分かりました。では、行ってきます」

 は自分が持っていたエルーンの名簿をグランに託し、グランもから快くそれを受け取り、二人の間のやり取りはあっさりとしたものだった。