空と海の間で(02)

 それから。

「ええ、ユーステス、水鉄砲の修理が終わったら別の武器の修理に駆り出されたんですか?」
「いや、一度はその手を止めての様子を見に行ったが、そこでがサンダルフォンの所で忙しそうにしてるの見てなあ。それでまだほかの武器も見てやるってユーステスの方からスカルにそれを持ち掛けてな。スカルも嬉しそうにユーステスのそれ応じちまったんだ」

 がスカルの海の家に戻れば、そこにユーステスの姿はなく。

 エルモートは申し訳なさそうにユーステスが不在の理由をに打ち明ける。

 エルモートは言う。

「このアウギュステは、潮の関係で武器が錆びついたりそれで壊れたりする事がけっこうあってな。ユーステスの技術なら、どこも引っ張りだこだ。実際、ユーステスの水鉄砲の修理を見ていたほかの男達からも自分達の調子悪くなった武器を見て欲しいって依頼が何件か来てたな。多分、当分、帰ってこれないと思う」
「そうですか……」

 それなら、もう少しサンダルフォンの店を手伝っていれば良かった。は、この時ばかりはユーステスが不在で落ち込む。

 と。

、ユーステスが帰ってこなくて暇になったの?」
「それなら、オレ達と一緒に見て回るか?」

「カリオストロ、クラリス。二人も来てたんだ」

 スカルの海の家でオムレツを食べていたのは、クラリスとカリオストロの二人だった。
 しかも。

「うわー、クラリス、可愛い水着! 水着だけじゃなくて、リボンとか花とかの飾りつけも可愛い! 良いな、どこでその水着見付けたの?」

「ふふふ。うちの可愛さが分かるとは、さすがじゃん。いつもの島のお店じゃなくてアウギュステの中にあるお店行けば、けっこう可愛い水着あるんだよねー。リボンや花も、アウギュステの雑貨店で見つけたのだよ」

 クラリスはに水着の着こなしを褒められ、嬉しそうにくるくる回って見せる。

「おいおい、クラリスだけ褒めんな。オレこそ、究極だろうが。どうよ、これで男の視線釘付けだぜ!」
「うん。カリオストロは見ていて安心するかなって」
「何だそりゃ」

 クラリスに負けないぜとセクシーポーズで決めるも、ににこにこ笑顔で言われたカリオストロは、ガクッとこける。
 クラリスは「は師匠相手でも忖度無く素直に評価してくれるから好きだわ」と、でカリオストロがこける様子を見てけらけら笑っていた。

 そして。

、さっき、コルワ達も見かけたんだよね。がユーステスと離れて暇なら、コルワ達と合流して、うちらと買い物行かない?」
「うむ。オレだけじゃなくてコルワ達なら、をもっと可愛くしてくれる方法も知ってると思うぜ。それでお前をほったらかしにしてるユーステスを見返してやれ」

「クラリス、カリオストロ……」

 は自分を思って誘ってくれるクラリスとカリオストロに感動するが。

「ふふふ。コルワもがついていればオレを可愛くしてくれるからな。コルワは、がついていればオレを追い返す事はないだろ」
「ひひ、コルワもが居れば、うちにもタダで可愛さを伝授してくれるよね。この水着、コルワでもっと可愛くなれると思うんだー。はっ、つい本音が、、今のは気にしないで!」

「……うん、まあ、カリオストロとクラリス達がついてる方がコルワ達も楽しいよね」

 ははは。は、カリオストロとクラリスの二人は自分を利用してコルワに取り入れようと知るも、別にコルワ達にとっても害はないと判断して、二人についていく事に決めたのだった。


 はエルモートに「ユーステスが帰ってきたら教えて」とだけ言い残して、さっそく、カリオストロとクラリスの二人とアウギュステのお店を回る事にした。

 店をめぐっているとさっそくコルワ、メーテラ、スーテラの三人と合流、ユーステスと離れた事情を説明すればコルワは少し考えて、「夜のデートなら水着より、浴衣ヴィラコーデにしない? そっちの方がユーステスを誘う効果あると思う」と提案し、それが採用された。

「これでどうかしら? あたしの自信作!」
「おおー、良いんじゃない?」

「はい。メーテラ姉様が選んだ落ち着いた色合いの浴衣ヴィラと、私が選んだ花の髪飾り、そして、コルワさんのお化粧と結った髪、とてもよく似合ってますよ」

 ぱちぱち。メーテラに浴衣ヴィラを選んでもらい、スーテラには花の髪飾りを、そして、コルワにそれにあう化粧と髪も結ってもらい、その完成品を見た三人から拍手が送られる。

「浴衣ヴィラはベアトリクスの青、髪はゼタっぽくて良いかも」

 は、浴衣はベアトリクスと同じ青で、三つ編みを何本か編んでそれを団子状にした髪型はゼタっぽくなって嬉しそうだった。

「コルワのおかげでオレ様の可愛さ倍増、これでこのオレがアウギュステでナンバーワンだろ」
「うちの可愛さで、アウギュステに来てる男達を悩殺しちゃうよー」

 ついでにカリオストロとクラリスもコルワに可愛くしてもらい、満足した様子だった。

 それからはカリオストロとクラリス、コルワ達との買い物を楽しみ、「じゃないか、一人か?」と、途中でシルヴァ、クムユ、ククルの三人、そして、ソーンが現れ、「、コルワ達に可愛くしてもらったの? 良いな、コルワ、あとで私達にもやってくれない?」とソーンがコルワに頼めばコルワも誇らしげに「任せなさい。あなた達ならやりがいがある、腕が鳴るわ」と、やる気を見せていた。

 はカリオストロ達との衣装選び、そして、シルヴァ達との買い物でけっこうな時間を使ってしまい、皆でスカルの海の家に戻ってきた時はすっかり夜になっていた。

 ユーステスを待たせて怒らせてるかもしれない――は急いでエルモートのもとへ向かったけれど。

 ユーステスは不在だった。

 エルモートは再び弱った様子で、にユーステスが不在の理由を教えた。

「ユーステスの奴、あれから一回は帰ってきたが、ほかの奴ら――カシウスと出て行ったぞ」
「ええ、ユーステス、カシウスに捕まったんですか?」
「ああ。ユーステスはオレがはカリオストロ達と買い物に行ったと伝えれば、が戻ってくるまで此処に居る気だったが、それ見つけたカシウスが強引にいい店があると言って連れ出しちまったんだ。どうやら、入れ違いになったようだな」
「カシウス、組織の中でもユーステスを気に入ってるから……。いつ帰ってくるかな……」

 ユーステスを気に入ってるカシウスに捕まって居酒屋にでも行っていれば、いつ帰ってくるか分からない。

 エルモートは言う。

はもう、此処でユーステスを待ってた方が良いと思うが」
「そうですね……」

 は考える。
 のそばではユーステスが帰って来てないというのを知ったカリオストロ達は、「大丈夫か」と彼女を心配しているようだった。
 海の家でユーステスを待ってるはいいが、カリオストロ達から団長のグランに伝わり、あまり大ごとにしたくはないし、これくらいで心配されるのは苦手だった。は決心する。

「あ、あの、ユーステスが帰ってきたら此処で待ってるって、伝えておいてくれませんか」

 は温泉に近い海岸を指定して、それをエルモートに伝えたのだった。


 はユーステスが来てくれるだろう海岸へ一人、向かった。

 が出て行ったのを見てカリオストロ達が顔をつきあわせて話し合うのは。

、一人で大丈夫かな? 一人のがユーステスの居ない間にへんな男に狙われないか、心配」
「そうだな。こういう時、武器も魔法も扱えないを一人にしない方がいい。オレ達でユーステスを探しにいってやろうか」

 クラリスとカリオストロ。

「ユーステスはいいけど、カシウスが行きそうな所、この中で分かる子居る?」

「カシウスの行きそうな所、あたしでは思い付かない。どうしたもんかね」
「何か良い手はないですかね……」

 コルワ、メーテラ、スーテラ。

「イルザならカシウスの居場所、分かるんじゃない?」

「そうだな。イルザとゼタ達ならさっき、海岸で見かけた。私達でイルザの所まで、行ってみるか」
「あたしとクムユも、シルヴァ姉達についていくよ」
「カシウス捜索隊結成~。シルヴァ姉ちゃん達ならすぐにカシウスも見付かるです!」

 ソーン、シルヴァ、ククル、クムユがそう言って海の家を出て行こうとした所、で。

「どうしたの?」

 彼女達の前に現れたのは――。



 潮風が気持ち良い。

 は人気の無い岩場に座って、一人、海を見詰める。

 夜の海は怖いと聞いていたけど、アウギュステの海はキラキラ光ってとても奇麗だった。

 ユーステスと離れている間、サンダルフォンやカリオストロ達のおかげで寂しくはなく、とても充実した時間は与えられていた。

 けれども。

「やっぱり、ユーステスと一緒が良かったかなー……」

 まさか、ここまですれ違いが続くとは思わなかったは、ユーステスをあっさり手放した事を今になって後悔した。

「ユーステスと時間はどうするかとか、待ち合わせ場所はどうするかとか、そういうのちゃんと話し合いしてから、スカル君に引き渡すんだった……」

 はぁ。今更それを思うも、もう遅い。

「コルワ達にせっかく可愛くしてもらったの、ユーステスに見てもらいたいなぁ。ユーステス、遅いな、カシウスと何処まで行ったんだろう……」

 此処に来てから、三十分以上は経過している。
 ……。
 一回、海の家に戻ってカシウスが戻って来てるかどうか、様子見て来ようか。でも、またカリオストロ達が居て、彼女達の手を借りるのも気が重たい。

 メドゥーサに「何も出来ないというわりに、何でも器用にこなしているのが気に入らない」と言われたが、実際、こうして何も出来ない女だ。メドゥーサのように魔法が使えればユーステスの居場所も簡単に分かって飛んでいけるのに、それすらもできない。

 ……。

 どうしようかな、と、立ち上がった時。

 ぽん、と。肩に手を置かれた。

「ユーステス? ……あ」

 ユーステスかと思って振り返れば――。

「――君、さっきから一人で座り込んでるけど、どうした? 暗くなってから、一人じゃ危ないよ。オレが一人の君を楽しくて騒げる所に連れて行ってあげようか」

 ぞくり、と。はユーステスではない、下品な笑みを浮かべた見知らぬ男からそう声をかけられ、背筋に悪寒が走った。

「あ、あの、私、人を待ってるんです。だから、一人で大丈夫です」
「そうかい? でも、さっきから一人でつまらなそうに座ってたけど?」

 男はいつから自分を見ていたのか。

 じりじり。男はと距離を詰めていく。

「君の待ち人が来ないなら、オレと一緒に遊びに行かない? アウギュステのいい店、知ってるんだ」
「あ、あの、私、あなたに付き合うつもりありません、ごめんなさい。私、もう行きます、だからもう――きゃあっ」

 ドンッ。男がの肩を叩いただけで、は簡単にひざをついてその場で尻餅をついた。

 男は下品な笑みを張り付けたまま、尻餅をついたに近付く。

「このアウギュステはどういうわけか、声をかけるにも武器を所持している腕の立つ女ばかりで相手にされなかった。ここにきて君ほど丸腰で無防備な子は珍しい。そのまま大人しく――ッ?!」

「――それ以上、汚い手で俺の女に触れるな」

 相手の男はここで初めて自分の背後に男が立っているのに気が付いた。そして、背後の男が自分の背中にぴたりとその銃口をあてているのも気が付いてしまった。

 男は振り返らずとも背後に居る男の腕を理解し、冷や汗をかく。

「お前、は」
「そのまま静かに立ち去れ。これ以上に彼女に関われば、容赦せんぞ」

「くそ、覚えてろよ!」

 男は背中に銃口をあてている彼が――ユーステスは本気で自分をためらわず撃てる人間だと気が付いて、その場からさっさと逃げてしまった。

 そして。

、大丈夫か。全く、あいつの言うように丸腰で無防備のお前が人気の無い場所で一人で居るから、ああいうへんな男に引っかかる。今度からは気をつけ――」

 気をつけろと、彼女に説教しようとしたのは続けられなかった。


「ごめんなさい。説教は後で聞くから。しばらく、こうさせて」

「……」

 ユーステスはが自分に抱き着いてその震えを抑えているのを知って、彼女のそれを静かに受け入れるように背中に腕を回した。

 それから。

 ユーステスはが落ち着いた後、二人でようやく目的地の温泉に向かった。


「はぁー。こんな場所に温泉があったとは思わなかったね」
「そうだな……」

 メグのいう温泉は、洞窟を抜けた先にあって、そこは観光客の喧騒も聞こえてこない静かな場所だった。

 それだけではなく。

「満天の星空を見ながらの温泉なんて、最高でしょ。此処、宣伝したらカップルだけじゃなくても人気出るかも」

 空を見上げれば満天の星空が見られて、だけではなくユーステスもしばらくの間、ぼけっとその星空を見詰めていたのだった。

 ぱしゃん。は温泉には入らずに、足だけ湯に浸かる。

 の様子を見ていたユーステスは言う。

は、せっかく温泉に来たのに入らないのか」
「んー。コルワ達にせっかく可愛くしてもらった浴衣ヴィラと髪のセット、崩れちゃうから……。ユーステスは入りたいなら入って良いよ」
が入らないなら俺が入っても意味ないだろ」

 ユーステスもの隣に座って、足だけ温泉に浸かる。

 は隣に座ってくれたユーステスを見上げて、今まで聞けなかった事を聞いてみた。

「ねえ、カシウスと何処行ってたの?」
「木彫りの店」
「木彫りの店? 居酒屋じゃなくて?」
「カシウスに案内された店は、海岸に流れ着く流木や貝殻を集めてそれを使って色々作ってる店だった。そこで木彫り体験もできて、一時間くらいそれに没頭していた」
「へえ。カシウスがそれに興味持ったの? 意外」
「カシウスによれば、月には海や山といった自然的なものが一切無い岩だらけの寂しい場所で、そのせいでそういうものに興味があると話していたな……」
「ああ、それで」

 確かに、海や山といった自然なものが無い月では、海に流れ着く流木や貝殻での創作は珍しいかもしれない。は一応、ユーステスの話に納得する。

 は言う。

「ユーステスもカシウスと同じで、自然なものが好きよね。そのお店で何か彫ったの?」
「……」
「何彫ったの? 犬とか?」
「……の言う通り、犬を彫ってきた」
「やっぱり。良いね、あとでその犬、見せてよ」
「明日、完成品が届くらしい。明日見せる」
「楽しみ」
「……」

 本当に楽しみだな。は明日になったらユーステスが彫った犬が見られると分かり、嬉しそうだった。

 それを見たユーステスは。

「……お前、その浴衣ヴィラと髪飾り、コルワにしてもらったのか」
「うん。サンダルフォンの手伝いから戻ってきたらユーステスが居なくて、それ心配してくれたカリオストロとクラリスがコルワ達やシルヴァさん達も呼んでくれて、皆で色々買い物して楽しかった」
「そうか、それは良かった」
「最初に待ち合わせ場所とか時間とか、決めておけば良かったね。それならすれ違いも少なかったかも」
「そうだな。ところで、メドゥーサと何かあったのか?」
「え? メドゥーサ? 何で?」

 突然にユーステスからメドゥーサの名前が出てきて、戸惑う。

「いや。俺がカシウスと木彫りしている店に、メドゥーサが血相変えて突然入ってきてな。が待ってるのに何やってんのって」
「ええ、メドゥーサがユーステスを探してくれてたの?」
「そうみたいだな。俺はメドゥーサのおかげで、が俺を待ってるのが分かって慌てて店を出たんだ。でもその店、の所まで行くのにけっこう時間かかる場所でな。店を出ればそれが分かっていたサテュロスとナタクも揃っていて、俺はナタクの力での所まで飛んでいけた。ナタクの力が無ければ俺は男に襲われそうになっていたの所に間に合わず、それでがどうなっていたか分からないと思うとぞっとするな……」
「……ごめんなさい。これからは一人で出かけないようにするよ」

 は今回ばかりは、一人で出て行った自分が悪いと反省した。

「でも、メドゥーサだけじゃなくて、ナタクさんもユーステスに力を貸してくれたとは私も思わなかった」
「なんか知らんが、ナタクはでメドゥーサの面白い部分が見れたのでそれの礼だって笑ってたな。それ聞いたメドゥーサはナタクに余計な事言うなって顔真っ赤にして怒ってたが。お前、メドゥーサに何やったんだ」
「何だろうね。私はただ、メドゥーサ達の代わりにサンダルフォンのお店を手伝ってただけだけだよ」

 は、メドゥーサとのやり取りを思い出し、くすくす笑う。

 ユーステスは満天の星空を見上げ、に言った。

「俺はまさか、星晶獣の力で空を飛べるとは思わなかった。あんな体験、中々出来んぞ」
「良いね。私も空飛んでみたかったなー」

 もユーステスにつられて、星空を見上げる。

 ユーステスは星空からのセットされた髪に視線を移す。

「お前の場合、此処でも話していたが空を飛べばせっかくセットした髪が乱れるのが嫌とか言いそうだな。メドゥーサについてきたサテュロスもナタクの力に触れるとせっかくセットした髪が乱れるのが嫌だって、そればかり気にしてた」
「それはあるかも。コルワは本当に、私にあった可愛さを提供してくれるからね。で、どう? この浴衣ヴィラと髪型、可愛い?」
「ああ。浴衣ヴィラは似合ってる」
「良かった」

 えへへ。ユーステスに褒められたは照れ臭そうに髪をいじる。

 と。

 ここでユーステスの腕が伸びて、の花の髪飾りに触れてきた。

「……だが、それ、その花の髪飾りと結い上げた髪型は無駄になるからそこまで凝った風にするのは止めた方がいいと、コルワに伝えておいてくれるか」
「え? この花の髪飾りと髪型、私にあわなかったの? ゼタっぽくて良いなと思ったんだけどなぁ」

 は花の髪飾りとゼタっぽくしてくれた髪型はあわなかったのかと、不安になるが。

「いや? 似合うは似合うが、これからする行為に邪魔になる、とだけ」
「何――」

 ユーステスはの了解を取らずに強引に髪飾りを外した後、彼女の髪に自分の指を絡めて三つ編みを解き、軽い力で押し倒し、それから――。


 その後の話を少し。


 あの後には結局、ユーステスと温泉に入った。

 温泉はとても気持ち良くて、髪を気にせず入って良かったと思った。

 はユーステスと温泉を満喫した後にホテルに戻れば、海岸の方が騒がしい。

 ホテルに戻ってそこに残っていたまりっぺに「何の騒ぎだ?」とユーステスが聞けば「海岸でグランサイファーの団長さん達が中心になって、散らばってた団員達と街の人達を集めてバーベキュー大会をやってるんですよ。オイゲンさんとジンさん達が地元の人達と一緒になって海と山に散らばって狩りで色々取ってきてくれたんです。明日はそれ使っての食い大会も企画してるんで、それもと見学してくださいね~」と教えてくれた。

 まりっぺについているメグからも「バーベキュー大会は組織のイルザさん達も参加してるから、もユーステスさんと参加してきたら? まりっぺが企画した明日の大食い大会は組織のカシウスさんとベアトリクスさん達も参加してくれるって。新人のカシウスさんなら連勝中のルリアとココルに対抗できそうだから、それで大食い大会もいつも以上に盛り上がりそうだから期待してるんだよねー」との話を聞いて、二人はさっそく海岸に向かった。

 と。

「あ、サンダルフォン達が居る。私、ちょっとサンダルフォン達の所に行ってくる」

 海岸のバーベキュー大会に行けばメグ達の話した通りに組織のイルザ達の姿もあって、そこへ混ざるというユーステスと離れたは、サンダルフォンの輪の中へ向かった。

 がサンダルフォンの輪の中に向かった理由はただ一つ。

「メドゥーサ」

 サンダルフォンの輪の中には、彼の店を手伝っていたメドゥーサ、サテュロス、ナタクの姿があった。

 メドゥーサは椅子に座って、サンダルフォンが提供したらしいアイスコーヒーを飲んでいる。

 メドゥーサは椅子に座った状態で、突っ立っているを見上げる。

「何、アンタ、ユーステスと目的の温泉から戻ってきたの?」
「うん。メドゥーサがユーステスを探してくれたおかげで、ユーステスと会えて彼と目的地の温泉まで行けた。戻ったらメドゥーサにそのお礼、言おうと思って。ありがとう」
「ふん。武器も魔法も扱えないアンタが一人で居る所にへんな男に絡まれて襲われでもすれば、アタシ達の責任になるじゃない。アタシはその責任を取らされるのが嫌だったから、同じくアンタを心配していたカリオストロ達の代わりにユーステスを探しに行っただけよ。星晶獣のアタシであれば、カシウスに連れていかれたユーステスの居場所くらい簡単に分かるからさ」
「ありがとう。団長さんの艇に帰ったら、そのお礼でメドゥーサの好きなもの作るよ。何が良い?」
「……」
「何?」
「……パンケーキ、甘いクリームのったやつ」
「任せて」

 は胸を張ってメドゥーサに応じる。

 それを見たメドゥーサは。

「……アンタってさ」
「何?」
「……何でもない」
「そう?」

 それからはメドゥーサに構わず、ナタクとサテュロスにも礼を言って彼らの好きなものを聞いて、最後にサンダルフォンにも同じようにすれば彼は「これユーステスにも持ってけ、お前に店の手伝いの礼を忘れていた」と反対にいれたてのアイスコーヒーを二人ぶん、もらってしまった。

「本当にありがとう!」

 はサンダルフォン達に手を振って、そこから離れた。

 が出て行ったのを見てサテュロスは、メドゥーサに改めて聞いた。

「メドゥちゃん、の事、どう思ってる? まだ苦手?」
「……ふん、あの人間は、嫌いじゃないわ」

「ふふ、良かった」

 サテュロスは、メドゥーサのに対する態度が変わった事に、微笑む。

は武器も魔法も扱えずとも、色々凄い奴だ」
「うむ。彼女ほど面白い人間はそう居ないだろうな。団長達が武器も魔法も扱えない彼女を手放したくないのも分かる」

 でメドゥーサの変化を見たサンダルフォンは感心した様子で、ナタクは愉快そうに笑っていた。


 余談。

、メグとまりっぺに紹介された温泉、どうだったんだ?」
「良かったなら、あとでその温泉の場所、うちにも教えてよ」

 カリオストロ、クラリス。

「温泉、良いわよね。でも、そこが静かであまり知られていないような場所なら、私達が行って騒がない方が良いかもしれないわ」
「そうだな。メグとまりっぺも、とユーステスだからこそ、その温泉教えたかもしれないしな」
「アウギュステで良い温泉なら、そこだけじゃなくていっぱいあるからね。あとで、メグさん達にあたし達でも使えるような――騒いで遊んでも良いような温泉ないか聞いてみようよ」
「温泉、温泉~。お姉ちゃん達と温泉で遊ぶの楽しみです!」

 ソーン、シルヴァ、ククル、クムユ。

 はユーステスの所に向かう途中でメドゥーサ以外にも心配してくれた皆が集まってきて、囲まれてしまった。

 は皆に「温泉良かった。けど、ソーンの言うように静かで落ち着いた場所でそれだからメグ達の許可がなければそこに入れないかも」とだけ、伝えたのだった。

 そして。

「皆も心配してくれてありがとう。皆にも団長さんの艇に帰れば皆の好きなもの作るから、楽しみにしてて。サンダルフォンのコーヒーがあるから、私、もうイルザさん達の所に行くね」

「あ、待ってください」

 サンダルフォンのアイスコーヒーを手にしてそれを気にしたは急いでユーステスの所へ向かうも、それを引き止めたのはスーテラだった。

 はスーテラに応じて、止まる。

「スーテラ、何? 何か好きなものに変化あったとか?」
「いえ、そういうわけでは……」
「?」
「ええと……」

「ん、スーテラ、どうした?」
「スーテラ、に何か言いたい事でもあるの? あるなら言った方が良いと思うけれど」

 もじもじと。をジッと見詰めて何か言いたそうにしているがそれが言えないのはスーテラで、スーテラの様子を見て声をかけるは姉のメーテラで、彼女の背中を押すのはコルワだった。

 スーテラはコルワに背中を押されて、決心する。

「あの、さん。頭に私が選んだ花の髪飾りをつけてないですけど、どうしたんですか?」
「――」

 ぴしっと。

 スーテラの一言で場の空気が凍り付いた。

 はスーテラにそれを指摘されて周りの人間達にも分かるくらい顔が真っ赤になるも、慌てて帯を指さした。

「え、えっと、スーテラに選んでもらった花の髪飾りは、ここに、この帯の所につけてるよ!」
「あ、本当ですね。花の髪飾り、そんな使い方もあるんですね~。そこにつけても可愛いです」

 にこにこ。スーテラは自分が選んだ花の髪飾りは浴衣ヴィラの帯の飾りで使えると分かって、嬉しそうだった。も誤魔化せたとほっとした、ところで。

「ところでさん、コルワさんにせっかく結ってもらった髪もほどけて乱れてますけどそれでユーステスさんの前に行って大丈夫ですか? もう一度、コルワさんに頼んでセットしてもらった方がよくないですか?」
「――」

 もう一度、場の空気が凍り付き、の顔もゆでだこのように真っ赤に染まる。

「だ、大丈夫、これでユーステスの前に出ても大丈夫だから! そこ心配しないで!」
「本当ですか?」
「う、うん、ユーステスは凝った髪より、おろした方が好きだって言ってくれてそれで」
「あら、ユーステスさんは、そこまで凝った髪型好きじゃなかったんですか?」
「そ、そういうわけだからそこまで心配しないで、わ、私、もうイルザさん達の所に行ってるから! それじゃあ!」

 はスーテラの追求から逃げるよう、その場から立ち去ったのだった。

さん、本当に大丈夫ですかね?」

 スーテラは本当にを心配して、彼女が去った見詰めている。

 スーテラとのやり取りにカリオストロとクラリスは笑いを堪えているのか震えて、ソーンとシルヴァは肩を竦めるだけで、ククルはスーテラと同じくわけが分かっていないクムユの耳を塞いでやり過ごしていた。

「メーテラ、スーテラをちゃんと教育しておきなさいよ」
「……肝に銘じるわ」

 スーテラの姉のメーテラをジロリと睨むのはコルワで、コルワに言われたメーテラは参ったように夜空を見詰めるだけだったという――。

水着ユーステスが実装されたので、それにあわせてのアウギュステの温泉ネタ。因みに管理人は水着ユーステスは引けてません、はい。
メグとまりっぺは良いコンビだと思います。メグは、マーガレット・ブルーマリンという本名の方もまたカッコイイ。
因みに最後の方で温泉では本番までやってないです。寸止めというか、ホテルに一泊予定、の、設定。
スーテラは可愛い。