十二月:雪の日

 人が死んでいる。
 道の上で、血を流して人が死んでいた。
 着ているものから男だと判別出来る。学生服。そう、彼はまだ学生だった。
 どうやら彼は、ビルの上から飛び降り自殺を図ったらしい。
 まだ若いのに、彼を自殺に追い込んだ動機は何なのか考えようとして――、止めた。
 道行く人達が彼の人の死を哀しむ事無く、せわしなくその死体の横を足早に通り過ぎていく。
 まるで自分には関係無いような素振りで。
 それでも正義感の強い人は、携帯電話を手にして慌てた様子で救急車を呼んでいる。救急車が来た所で役に立たない事は、連絡をした人でも分かっている筈だ。
 そう、私も早い所、こんな所でぐずぐずしていないで、会社へ向かわなければいけないのに。
 それなのにまだ此処に居るのは。
 冷めた目で、死体を見下ろしているのは。

 雪に溶けて染み込んでいく血の様が、とても綺麗だったせい。

 ああ、こんな私でも此処に生きていると言うのに。
 私は救急車が到着したのを確認してから、いつものように会社へと向かう。

 それは、雪が積もった日の些細な出来事。