と。
「、居るかー?」
「こんにちは……」
「サラーサ、ニオ、いらっしゃい」
十天衆のサラーサとニオが現れ、二人は遠慮なくグウィンの隣に座る。
そして。
「お前、イルザの組織のとこのグウィンだっけか、よろしくねー」
「この場でははじめまして、だよね。よろしくね」
「ど、どうもッス。よろしくお願いします」
グウィンはグランサイファーの団員になって、ここで初めて、サラーサとニオに向けて挨拶を交わした。
グウィンはこの時、コルワ達と同じく自分とはあまり接点がないが、全空一最強と謡われる十天衆の登場に、少しばかり緊張している。
サラーサとニオはグウィンに構わず、に気さくに声をかける。
「、ケーキくれよ。団長からの依頼の戦闘こなしているうち、糖分足りなくなったー」
「私も戦いの終わりに何か甘いもの欲しくなったからの所に来たの。何かない?」
「ケーキは今すぐ食べたいなら朝に作ったのがまだ残ってる、それ以外に今すぐ甘いもの食べたいならクレープかパンケーキ焼けるけど。どうする?」
「お。ケーキ、朝に作ったぶんの残りでもいいぜ。クレープかパンケーキ、今回はクレープにするか!」
「うん、良い感じ。私もサラーサと同じクレープお願い」
「お任せを~」
はサラーサとニオの注文を受け、張り切ってクレープの材料をボウルに入れて混ぜている。
クレープが焼けるのを待っている間にサラーサは、と会話を続ける。
「そうそう、さっき、カリオストロとクラリスとそこの廊下ですれ違って聞いたんだけどさ、今度、イルザの組織の会合あるんだって?」
「うん。イルザさんの組織の皆が顔見せで集まる会合だよ。会合といっても重苦しい会議じゃなくて、ただの食事会だけど」
「その食事会の席に毎回、甘いもん、出る?」
「出るんじゃないかな。イルザさんの組織が使ってるレストランは、毎回、食後に甘いもの出してくれるよ」
「イルザの組織は、いいなあ。あたし達の――十天衆の集まりなんか、シエテが自分の好きな喫茶店以外で予約が取れない時はケチってロクな会場でやらないんだ。それのせいで食後に甘いデザート出ないクソな時もあってさ」
「はは、それでシエテさん、十天衆の集まり悪いっていつも嘆いてたんだね。皆で集まって食事会するなら十天衆でも、デザートも必須というか、それぞれの好きなもの把握しておいた方がいいよね」
「だよね! さすが、は話が分かっていいわ。もし、此処にシエテが来た時にからそれとなくシエテにそれ話してくれないかな。シエテ、女子供には優しいから」
「そうだねえ、此処でシエテさん見かけたらその話、それとなく伝えておくよ。あ、ニオ、お茶、何がいい?」
「私は、紅茶でいいかな……」
「了解。ニオ、クレープのトッピングは何がいい?」
「生クリームは必須として、チョコバナナにするか、それともミントをのせたアイス系かなー。あ、苺系もあるし、抹茶とあんこの組み合わせもいいなぁ。どれにしようかな、色々あって迷うね……」
「ゆっくり選んでいいからね」
「ありがとう」
はサラーサと会話を続ける間もニオを気にして、彼女にも会話に参加できるようにしている。
――力を持たずとものこういうとこ、凄いんだよな。さすが、あのユーステスさんの相手をしているだけあるというかなんというか。
グウィンは、力を持たずとも会話力の高いに素直に感心する。
――まあ、自分は、いくらグランサイファーの団員になったところで雲の上の存在で変わりない十天衆の中に入っていける実力も勇気もまだないしな、ここは食事に集中する振りをしてを見守るだけにしておくか。それがいいな、うん。
グウィンは、自分がグランサイファーの団員になれてものよう、全空一最強と謡われる十天衆の中に入っていける勇気はなく、ここは食事に集中して見守るだけに徹しようとしていたその矢先、だった。
「――サラーサ、組織の会合の会場に興味あったらそこのグウィンに聞いてみるといいよ。組織の会合の会場、グウィンの実家のレストランだから」
「ぶはっ」
に思い切り名指しされたグウィンは思わず、水を噴き出してしまった。
「大丈夫?」
「あ、ああ、大丈夫。布巾貸して、自分で拭くよ」
グウィンの噴き出した水はカウンター席のテーブルに散り、は慌てて布巾を差し出す。から布巾を受け取ったグウィンは、テーブルを拭いた。
は、急に水を噴き出したグウィンを不思議そうに見ている。
「何で急に噴き出したの? 何か面白い話でも思い出した?」
「いや、が自分に話を振ってくるとは思わなかったから、つい」
その後でグウィンは、サラーサとニオを気にして言う。
「あ、あの、サラーサさんにニオさん、水、かかりませんでしたかね?」
「いや、大丈夫。気にすんな」
「うん。私もそこ、気にしないでいいよ」
グウィンは自分の噴き出した水でサラーサとニオを気にするも、サラーサとニオはそれを笑いながら応じる。
それからサラーサはの話を聞いて、羨ましそうにグウィンを見詰める。
「そういや、グウィンの家がレストランとは、イルザからも聞いた事あったな。それは本当の話か?」
「は、はい、自分の実家はレストランを経営していまして、イルザ教官の組織の集まりでも利用されるほどで……」
「いいな、それ。羨ましい。レストランのデザート食べ放題じゃないの」
「お客さんに出すものは基本、うちでは出ませんよ。それにうちのご飯は、レストランで出すものより雑っスから……」
「そうでも、毎日、美味しいものが食べられるのはやっぱり羨ましいね……」
サラーサだけではなく、ニオも羨ましそうにグウィンを見詰めている。
グウィンは少しの勇気を持って、サラーサとニオに向けて言った。
「あ、あの、サラーサさんにニオさん、今度、うちのレストランに来てくださいよ」
「お、いいのか? イルザに聞いてたグウィンのレストラン、前から興味あったんだよな。それに、あの組織の連中が通ってるなら、当たりの店で間違いない。今度、十天衆の皆でグウィンのレストランに行っていい?」
「うん。十天衆の皆が集まる場所としては、グウィンのレストラン、丁度良いかも。グウィン、お願いしても?」
「は、はい、もちろん。十天衆の皆さんがうちのレストランを利用してくれたのが分かれば、うちの親も喜ぶっスよ」
「決まりだ。いやー、いい場所見つかって良かった、本当。シエテに行きつけの喫茶店以外で皆で集まれる良い場所があるって教えればあいつ、泣いて喜ぶぜ、きっと」
「だね。シエテ、十人が一堂に集まれる場所が行きつけの喫茶店以外に中々無いってぼやいてたからね。グウィンに感謝だよ」
「……」
グウィンは、今まで雲の上の存在だと思っていた十天衆のサラーサとニオからそう言われ、胸がいっぱいになった。
この時にふとを見れば彼女は「良かったね」と、声は出さず、口の動きだけでそう伝えてきた。グウィンもに声は出さず口の動きだけで「ありがとう」と、返した。
そして。
「サラーサ、ニオ、クレープできたよー。朝に作ったケーキもあるよ」
「ありがと、相変わらず美味そう。戦闘終わりに糖分取るには、ので十分だな」
「ありがとう。戦いの後にの作るものを見ると、ほっとするね」
ここでのクレープと朝に作っていたケーキを出されたサラーサとニオは、それをありがたく受け取り、美味しそうに食べ始めた。
そしてそれからは、十天衆のサラーサとニオを前にして緊張感のほぐれたグウィンも混ざって、他愛の無い会話を続けた。
「ごちそうさん。それじゃあ、またな」
「ごちそうさま。また後でね」
サラーサとニオはのクレープとケーキに満足したよう、食堂を後にしたのだった。
そして。
「グウィン、今日は、団の新入りとしてほかの皆に顔を覚えてもらえるように顔見せに来たんでしょ? 食べ終わって暇なら食堂の手伝いする? 此処なら、今みたいにほかの団員達と交流持てるよ」
「……そうだな。たまには此処で、の手伝いやるのもいいか。でも此処で自分のような新入りがほかの団員に顔を覚えてもらうのはいいけど、さっきのコルワさんとメーテラさんとスーテラの三人もそうだけど、十天衆のサラーサさんとニオさんみたいに、最初から大物がくるのはちょっと予想外だったなぁ」
「コルワ達や十天衆のような大物相手にすれば、後輩の子達にすぐ伝わるっていう利点はあるよ。多分、コルワとメーテラとスーテラの三人、サラーサとニオの二人がさっそくグウィンの事、後輩達にも広めてくれてるんじゃないかな」
「へえ。それは確かに利点だな。は本当、組織でもこの団でも、人間関係の情報に強いんだな」
「ふふふ、イルザさんの組織ではグウィンの方が私よりちょっと先輩だけど、この団では私の方がグウィンより先輩だからね! 組織だけじゃなくてこの団の皆の事が知りたければ、私に遠慮なく聞いてね! この私であれば、十天衆やそれ以外の大物相手でもどういう風に接すればいいか、分かってるから」
「はいはい。よろしくね、先輩」
グウィンはいつも以上に張り切るに笑って、それに応じたのだった。
それからグウィンは、と同じキッチンに入った。
――まあ、昼も過ぎた時間だし、そうそう大物や危険人物には遭遇しないだろ。
グウィンは昼時を過ぎた頃でもあったので、気軽にの手伝いに入ったに過ぎなかったけれども。
コルワ、メーテラ、スーテラの三人、それから、サラーサとニオ以外でも、目当てにやってくる団員(大物)が多いのを、この時のグウィンはまだ知らない。
それはすぐにやってきた。
「、居るんだってー?」
「一緒に遊ぼうよー」
「食堂のお手伝いなら、わたし達もできるよ!」
十二神将のクビラ、ビカラ、シャトラの三人がやって来て、遠慮なく今回は一人で食堂で働いているの手伝いに加わってきた。
「今日は、グウィンも一緒なんだー。グウィンが新入りとして皆に顔見せに来てるってのは、団長さんからも聞いてるよ、よろしくねー」
「ええ、グウィンは、ぼく達相手で緊張すんの? いやいや、同じ団の仲間なんだからと同じで気楽にいこう、気楽に」
「そうだよ~。王子様がグウィンを仲間だって認めてくれたんだから、グウィンもわたし達と対等だよー」
――やばい、しょっぱなから、何故か十二神将の子達と一緒にの手伝いを……。
聞けば、ファスティバとジャミル、ローアイン達が不在でが食堂で一人の時は十二神将達だけではなく、色んな団員達が彼女の手伝いに入ってくれて、の方は素直にそれに感謝しているという。
最初は十二神将の彼女達も十天衆と同じく、雲の上の存在で緊張していたが、十二神将のクビラは本当に気の好いお姉さんで、ビカラも面白い子で、シャトラにいたっては団長のグランを「王子様」と呼ぶ部分は疑問の余地はあるものの仕事に関しては真面目で丁寧な子であるというのは、グウィンでも分かった。
「それじゃ、またねー。グウィン、次は、あたし達相手でも気軽に声かけてねー」
「今度、グウィンもぼく達と一緒に遊ぼうね」
「ふふ、グウィンと一緒に王子様について話すのも良いかも~」
グウィンは最後には、クビラ、ビカラ、シャトラの三人と仲良くなって、解散したのだった。
というか。
「ってかさ、この食堂で目当てに来る客が多いっての、団長さんから聞いてたけど、手伝いやっているうちに十天衆や十二神将以外でも白竜騎士団のランスロットさん達とか、シャルロッテさんのリュミエール騎士団、レヴィオン騎士団のアルベールさんと彼についてる三姉妹、アルスター島のヘルエスさんとセルエスさん、ノイシュさんとスカーサハ達、そのほかに秩序の騎空団のモニカさんとリーシャさん、シヴァさんやバアルさん、ナタクさんやサテュロス、メドゥーサを中心とした星晶獣、天司のサンダルフォン、そうそうたる顔ぶれ、それだけじゃなくて、スカイレースで活躍してるレーサーのミュオンさんまで来るとは思わなかった」
「グウィンてば、ミュオン見て思わず彼にサインねだってたね。私もグウィンがミュオンのファンとは思わなかった」
「は、ミュオンさんのレース、見た事あるのか? ミュオンさんのレースは、一度見れば目が離せないくらい、凄いんだぜ!」
グウィンは、スカイレースで活躍するレーサーのミュオンのファンで、この艇でミュオンと遭遇できた事に興奮が冷めない様子だった。
因みにミュオンはグウィンが自分のファンであると分かって、快くサインに応じている。
「私はミュオンのスカイレース見た事ないけど、一度見に来てくれってミュオンに誘われた事があるから、一回、ユーステスと一緒にスカイレースを見に行ってみようかな」
「えー。、ミュオンさんに直接誘われたの? いいな、羨ましい」
「それなんだけど。随分前に、ミュオンのスカイレースの会場で悪い人間に利用されてる星晶獣が居てそれがレースのコースで暴れるからどうにかしてくれっていう依頼があったらしくてさ、ここの団長さんとルリアちゃん達はもちろん、ゼタとベアトリクス、ユーステスとバザラガ、組織の皆でその任務に参加してたんだって。ミュオンは多分、その縁でもう一度、ユーステス達にスカイレースに来て欲しくて、私を誘ったんだと思うよ。グウィンはゼタ達からそれ聞いてない?」
「ああ、それ、自分もゼタ先輩達から聞いてるよ。その時の自分は組織の人間じゃなかったけどその話をゼタ先輩達から聞いて、素直に羨ましいと思った。またスカイレースの会場に潜入捜査とかやらないかなー。組織でもミュオンさんのスカイレースだけじゃなくて、ゼタ先輩とベア先輩達がやってるような特別な施設に潜入捜査っていうの、憧れるよな」
「その時の団長さんとルリアちゃん達、それから、ゼタとベアトリクスはミュオンと同じスカイレースのレーサーとして、ユーステスはバザラガと裏で悪い人間に利用されてた星晶獣の調査してたらしいけど、私も次にそこで任務あったらユーステスのレーサー姿見てみたいなぁ。きっとレーサー姿のユーステスもカッコイイよね! それから、私もグウィンのいう組織でゼタとベアトリクス達がやってる特別な施設の潜入捜査、憧れてるんだー。更にその潜入捜査で夫婦役とかでユーステスと一緒なら、最高だよね!」
「はは、はやっぱり、何でもユーステスさん一番なんだな。でも、自分とが組織でゼタ先輩達のよう特別な施設で潜入捜査できるの、まだ先が長そうだな……」
グウィンは、がいつものようレーサー姿のユーステスを想像して興奮が冷めない様子に苦笑しつつ、組織ではゼタ達のよう、自分も特別な施設で潜入捜査が出来るくらいにはなりたいと思った。
というか。
「というかさ、十天衆と十二神将を渡り歩き、各国の騎士団にも顔が広く、星晶獣や天司達も従えて、更にミュオンのスカイレースもこなせる団長さんの方が凄くない?」
「同感」
グウィンはとうなずきあい、グランに遠慮せず、笑いあった。