皆で昼ご飯のラーメンを食べ終わってからグラン達は、計画通りにマナリア学院を目指した。
その間にイルザ達は、自分達も独自に白紙の魔術書について調べると話してから艇を降りて自分達の拠点に帰っている。
因みにアイザックはロゼッタについて、団に残った。
マナリア魔法学院にて。
「ええと、目の前に居るのはミラちゃん先生ことミランダ先生!」
「へえ、これが噂に聞いた通りの白紙の魔術書の威力かー。実際に私の言葉での記憶が戻ったのを見るとこれはマナリアでも危険物扱いで間違いなし、バザラガの言う通りにカリオストロかマギサ、アルルメイヤにレイ、あるいは、星晶獣か天司達か、とにかく、それらに相当する凄腕魔術師の仕業に違いないわね」
マナリア学院の講師の一人であるミランダは、ロゼッタから白紙の魔術書の説明を聞いて実際に最初は自分について忘れているにある言葉を言えば、彼女は簡単にミランダについてあっさり思い出してくれて、ミランダもその魔術書の危険性を実感したのだった。
ミランダのそばには彼女の恩師であるジルと、マナリア魔法学院の生徒会長であるハンナとウィリアムの二人も付き従っている。
「そして、ジル教授と生徒会長のハンナ、役員のウィリアムのおかげでが団長さんとこの団員の人間だけを忘れているのが、これで判明したわね」
「そうね。それだけ分かっただけでも、此処まで来た収穫はあったわ」
ミランダの話にうなずくのは、ロゼッタである。
そう。はマナリア魔法学院について連絡を受けて出迎えてくれたジルを見るなり、「ジル教授、お久し振りです」と頭を下げて、グラン達を驚かせた。
ジルのほか、生徒会のハンナやウィリアムの事もしっかりと覚えていて、グラン達は「これでユーステスとの賭けがなくなったのか?」と心配だったが、ジル以外――グランサイファーの団員でもあるアンとグレア、オーウェンの三人、そして、ミランダの事は見事にすっかり忘れていたという。
これでミランダの言うよう、が白紙の魔術書で忘れているのはグランサイファーの名簿に登録してある人間だけであるのが判明した。
「えー、、ジル教授とハンナちゃん達だけ覚えてるの、ずるくない? 何でマナリアで一番の友達のあたしとグレア、ついでにオーウェンの事まですっかり忘れちゃってるのよー!」
「私もに忘れられてるのは、悲しいよ……」
「さんでアン様とグレア君が悲しんでいる姿を見るのは私も嫌です!」
アンとグレアとオーウェンの三人はの肩を揺さぶり本当に悲しそうな顔をするも、グラン達から白紙の魔術書についての説明を聞いた後、一番にアン、二番にグレア、三番にオーウェンの順でが思い出すような言葉を言って、結果。
「マナリアで一番の友達のアンとグレア、アンの騎士のオーウェンさん!」
「やったー!」
「良かった、本当に良かった!」
「これには私もアン様とグレア君と同じように感動しています!」
は順調にアンとグレアとオーウェンの三人を思い出し、アンとグレアから抱き着かれ、オーウェンも影で泣いていたという。
次に。
「おい、団長からが大変な目にあってるって聞いたが、本当か」
「団長達からの話を聞いて、来てやったぞ!」
グラン達からでグランサイファーの団員限定で忘れているという話を聞いて駆けつけたのは、臨時講師のエルモートと不良組のツバサである。
「へえ。、マジで大変な目にあってるのか。俺もがそのへんな魔術書のせいで色々よくしてやった俺の事を忘れてるのは気分悪いわ、さっさと俺について思い出させてやるよ」
「は、俺がグランサイファーに交換留学している間、色々世話してもらった恩があるしこんな俺でも突き放さず色々一緒に遊んだ仲だからな! 俺もに協力するぜ!」
エルモートはに色々世話をしてきた自分の事をすっかり忘れている彼女に同情し、ツバサは交換留学中にから色々世話をしてもらった恩があったので、彼女に思い出してもらえるように張り切る。
結果。
「熱血講師のエルモートさんに、不良だけど付き合いの良いツバサ君!」
「「っしゃ!」」
ぱん、と。に一発で思い出してもらったエルモートとツバサは、お互いの健闘を称えあうよう手をあわせ、エルモートとツバサだけではなくてアン達とも盛り上がる。
グランはその間、ミランダと一緒に白紙の魔術書について調べていたジルの方を振り返る。
「それでジル教授、に白紙の魔術書を送り付けてきた犯人、分かりましたか?」
「いや、それはまだ分かりません。ミランダやほかの講師達でも突き止められていませんね」
「ミランダ達の講師陣だけではなく、ジル教授でも駄目ですか?」
「私で特殊な封印魔術を使用しているところまでは突き止めましたが、それ以上はどうも……」
「特殊な封印魔術というと……」
「これの魔術書にはに送り付けた犯人が特定できないよう、特殊な封印が施されているとだけ」
「ええ、それじゃ、僕達で犯人見つけるのは無理だって話ですか?」
「そうでもありません。これの術式は、あるきっかけを与えれば簡単に解除できる仕組みのようであるという所までは分かりました。しかし、それが何であるかはまだ不明です。それはおそらくに関係するもので、団長達でそれを見つける事ができれば私達で、すぐにでも封印は解除できるでしょう」
「に関係するあるきっかけ、か……」
グランはジルに言われてその『きっかけ』が何か考える。おそらくはだけではなく、ユーステスにも関係するものであろうが、今のグランにはそれが分からない。
ジルはその場で考えるグランをほぐすよう、優しい調子で言った。
「これが空の民の人間の技術では無理であるというのが判明しただけでも、団長達には良かったんじゃないですか?」
「え、空の民の人間の技術では無理なものなんですかそれ?」
ジルの思った通りで、グランは考えるのを止めて顔を上げ、彼の話に耳を傾けるのを再開する。
「はい。ミランダ達でを標的にした白紙の魔術書、これを作るには空の民の人間では不可能なものであると分かったと同時に、星晶獣か天司か、あるいはそれ以外の第三の何かにしぼられたわけですよ。それで、団長と同じ空の民の人間ではないと分かっただけでも、団長にとって良かったのではないかと」
「なるほど。それなら、ジル教授の言うよう、僕にとっては良かったですね。無駄に同じ人間の団員達を疑わずにすんだみたいで」
「ええ。しかし反対に、難しい話になってきたのは確かですね」
「難しい話?」
ジルは声を潜め、に聞こえないよう、グランに耳打ちする。
「星晶獣や天司、それ以外の第三の何かと交渉するにはそれなりの人物を介してそれなりの場所で行わなければいけないし、そこにたどり着くまでにそれ以上の力が必要になってくるだろうというのは我々でも簡単に想像がつきます。団長だけならまだなんとかなりましょうが、そこに武器も魔法も扱えないを連れていけて彼らと交渉できる方法があるかどうか――私もミランダ達も、それを危惧しているのですよ」
「……ああ、なるほど、そういうわけですか。その時がくればには僕が同行しますし、ほかの皆もについてきてくれると思いますからそのへんは大丈夫だと思います。それにのあれ見てもらえれば分かると思いますけど」
「あれ、ですか?」
グランはマナリア魔法学院のアン達に囲まれて嬉しそうなを指さし、ジルもそちらの方を注目する。
グランは胸を張って、ジルに向けて言い放った。
「魔法が扱えずともああやってマナリアの皆と仲良くなったであるなら、星晶獣や天司、それ以外の何かとの交渉でも上手くやれると思いますよ」
「……なるほど。確かに魔法が扱えずとも我々の中に溶け込めるであるなら、なんとかなるかもしれませんね」
ジルはグランの話に納得したよう、優しく微笑んだ。
そして、それから。
「それでは、白紙の魔術書については引き続き、私達の方でも調べてみるわ。団長さんの方でも何かあれば遠慮なく連絡ちょうだいね」
「白紙の魔術書を作った魔術師は我々でも脅威となる存在とみなしているので、皆さんもくれぐれもお気をつけください」
「僕も組織の拠点というか、実家の倉庫の研究室に戻って色々調べてくるよ」
「分かった。色々、ありがとう」
グラン達はここでミランダとジル教授達、そして、アイザックと別れた。
マナリア魔法学院での登録者数はミランダ、アン、グレア、オーウェン、ツバサ、エルモートの六名。
「マナリアで犯人が人間ではなく、星晶獣や天司、それ以外の第三の何かの仕業だってとこまでは突き止めたが、これからどうするんだ?」
「そうだな。がユーステスの賭けに勝てるよう、ほかの仲間達の所に行ってみるか。その間に、各方面から白紙の魔術書についての連絡くるかもしれないしね」
「賛成!」
マナリア学院を出てからビィに聞かれたグランは仲間達にそう提案し、その提案に異論を唱える仲間達はいなかった。
翌朝。
まず向かったのは、がとても世話になっているロミオとジュリエットのヴェローナである。
グラン達から説明を聞いたロミオとジュリエットはさっそく、の心に残っている言葉を吐き出し、結果。
「モンターギュの王子様のロミオさんと、キャピュレットのお姫様のジュリエット!」
ロミオとジュリエットはが一発で自分達を思い出してくれて、ほっとした。
「、それのせいでユーステスさんの事まで忘れるなんて本当に大変ね。でも、記憶が無くてもその賭けでユーステスさんとの関係を修復できるようで、良かったわ。私とロミオは、それだけ心配だったの」
「僕もジュリエットと同じく、が早いうちにユーステスと関係が戻るよう、協力するよ。何かあれば何でも言ってくれ」
ジジュリエットはユーステスを忘れているを思うように彼女を抱き締め、ロミオの方は表面では明るく振舞うも内心ではジュリエットと同じくとユーステスの関係を心配していたのだった。二名追加。
次に向かったのは、白竜騎士団を有するフェードラッヘである。
そのを出迎えるのは、ヴェインだ。
「、よく来たな。それの魔術書の話は団長達じゃなくても、シェロカルテからも聞いてるぜ。しかし、マナリア学院であったようにグランサイファーに登録していない訓練生の事は覚えてるなんてなあ、それでアーサーとモルドレッドもこの時ばかりはグランサイファーに登録したのを後悔した事はないって愚痴ってたな」
白竜騎士団を訪ねた時には、マナリア学院で判明した時と同じく、アーサーとモルドレッド以外の騎士見習いの訓練生達――ヘンリーにクルス、トネリロの顔と名前ははっきりと覚えていて、それを間近で見ていたアーサーとモルドレッドの二人は「グランサイファーに登録するんじゃなかった」と、不貞腐れていたという。
「まあ、アーサーとモルドレッドもに一発で思い出してもらえたのは良かったじゃないか。俺とヴェインも一発でいけたが、ジークフリードさんは少し時間かかったな。でも、ジークフリードさんも思い出してもらえて良かったよ」
「俺の場合、とは団での集まりでしか接点無かったから時間かかって当然だが――しかし、あいつの場合は少し気の毒だな……」
ランスロットとヴェインは一発合格、ジークフリードは少し時間がかかるも思い出す事に成功したが一人だけ残された人間がいる。それは。
「何故だ、何故俺だけ思い出さん! 小娘、お前がこの国に来た時はこの俺も、ランスロット達と同じくよくしてやっただろう!」
「いや、そう言われましても目の前の騎士さんによくしてもらった覚えがありませんで……」
は四騎士の最後の一人、パーシヴァルだけは何分かかけても思い出せなかった。
「この私が白竜騎士団のランスロットさん達だけではなく、騎士の中の騎士と謡われる最強の騎士の一人のパーシヴァルさんと知り合いだった方が驚きですよー」
「お前にそう評価されるのは悪い気せんがしかし、お前に俺の全てを忘れられてる方が気分悪い。小娘、俺の家臣にしてやろう、俺の家臣にならないか、お前は今日から俺の家臣だ、くそ、何故これらの言葉で俺を思い出さん!」
にはどの言葉も効果なくパーシヴァルは、ぐああ、と、頭を抱える。
「よし、皆でパーシヴァルの言葉を考える――までもないな、多分これ、あまり深く考えないでラカム式でいけるんじゃないか?」
「ですね。多分、ラカムさんと同じ方法使えば案外あっさりいくと思いますよ!」
「ラカム式というと……」
グランとルリアからの助言を聞いたパーシヴァルは魔術書にあるラカムの「オレに超甘いコーヒーくれ」の項目を見て、少し考えてそして。
「……『このチャーハンも、美味いな』、これはどうか」
「炎の騎士、パーシヴァルさん!」
登録成功。おお、と、ランスロット達から拍手があがった。
当のパーシヴァルは「これ見るにパーさんの方が俺達よりに慕われてたんだなー」とヴェインだけではなく、ランスロットとジークフリードからニヤニヤされて、それを隠すように「これ以上にくだらん事に付き合わせるな!」と言って、と団長達から離れたのだった。
ランスロット、ヴェイン、パーシヴァル、ジークフリード、アーサー、モルドレッド、六名追加。
白竜騎士団はクリア、次にシャルロッテのリュミエール騎士団ではシャルロッテ、セワスチアン、バウタオーダの三名、アルベールのレヴィオン騎士団ではアルベールにユリウスにマイムにメイムにミイムの五名、アルスター島のスカーサハにノイシュにヘルエスにセルエルの四名、秩序の騎空団はモニカとリーシャで二名、彼らの登録もすんで難なくクリアできた。
合計、二十八。
そして、その中で。
「――おいおい、その白紙の魔術書の犯人として最初に全空一最強で最高に可愛い錬金術師のオレ様を疑うのは分かるが、こんなへんな魔術書作る暇があったら、対ユーステス用の惚れ薬かそれと似たような薬を作ってるぜ。そっちの方が面白いし、その方がも喜ぶだろうが。まあ、イルザの組織やマナリアの連中もオレの実力を分かってるようだから、そこは追及しないけどな」
「うんうん。いくら錬金術師で腕の良いししょーでも、この団にとって有害なものは作る気ないから、そこ安心してよねー。に関しても同じだよ。ししょーとうちとは、カワイイ同盟組んでるからね!」
色々な国に立ち寄って色々な人間の名前が増えて少し落ち着いた頃になって、一番最初に犯人と疑われた錬金術師カリオストロとクラリスが艇にやってきた。
カリオストロは一番最初に自分がに魔術書を送り付けた犯人と疑われたと知ってて憤慨するもこの団だけではなくイルザの組織やマナリアでも自分の実力が分かってくれているじゃないかと、これについては悪い気しなかったようだ。
彼女達について思い出したからも「これはカリオストロとクラリスの仕業じゃない」と確信を持ち、その疑いはすぐに晴れたという。二名追加。
それからカリオストロ以外にも疑いのあった魔術師のマギサ、アルルメイヤ、レイも艇まで訪ねてきて「これは自分の仕業ではない、犯人として疑われるのは心外だ」とはっきり否定し、グラン達も彼女達を疑った事を謝ってそれが受け入れられ、その一件はあっさり落ち着いたのだった。三名追加。
彼ら以外に星晶獣達も疑われていたがその間に来てくれたメドゥーサ、サテュロス、ナタクいわく。
「その白紙の魔術師の犯人としてアタシ達星晶獣を疑うのは分かるけれど、星晶獣はね、のようないかにも何もできない弱い人間にはもとから興味無いのよ。団長みたいに強くて特殊能力持ちの人間ならちょっかい出したくなるけどね」
「そうそう。あたし達はみたいな弱い人間に対して弱いものいじめしないよ。そこ、誤解しないでー」
「マナリアのジルの言うように星晶獣の力であればその白紙の魔術書は作れるは作れるが、メドゥーサやサテュロスの話している通りで星晶獣は自分より弱い人間には興味無いのでね、俺達がに対してそんなものを送り付ける意味は無いぞ。それの犯人は星晶獣とは別だと思う」
と、完全否定したのだった。ついでに星晶獣のメドゥーサ、サテュロス、ナタクの三人も登録に成功、ほかの星晶獣――シヴァやグリームニル、アザゼルにアテネ、アフロディーテなども「自分達は犯人ではない」と完全否定し、ついでに白紙の魔術書に登録してくれたのだった。
同じく天司のサンダルフォンからも自分達が疑われた件に関して不服そうに否定する。
「俺達、天司も星晶獣の奴らと変わりないぞ。天司の力でも白紙の魔術書は作れるは作れると思うが、天司は団長達やイルザ達のような強い人間には興味あってのようないかにも弱い人間には興味持たんし、それをに送り付ける意味が分からん」
サンダルフォンの意見にうなずくのは、彼と同じ天司達である。サンダルフォンはしかし「まあ、俺もが俺について忘れるのは気分悪いからな、それのゲームに付き合ってやるよ」と言って登録成功、サンダルフォン以外のほかの天司達も同じ意見で、快く白紙の魔術書に登録してくれた。
星晶獣や天司達の中にはグラン達のように一発で登録というわけにはいかず、ラカムやパーシヴァルのよう少しの時間を要したが、しかし、団長のグラン達の助言もあって全員無事に登録できた次第である。
因みに星晶獣と天司達の数はここでは除外する。
そして。
彼ら以外にもシェロカルテからだけではなく、ほかの団員から白紙の魔術書についての話を聞きつけてきたというお馴染みのサラとボレミアの二人、コルワ、メーテラ、スーテラの三人、ルナール、ミラオル、ザーリリャオー、メリッサベル、マキラのおこたみメンバー五人、ユエル、ソシエ、コウ、ヨウの四人、アリーザとスタンの二人、シルヴァとククルとクムユの三姉妹、ヴィーラとユーリとファラ、タイアーの四人、ジンとソリッズの二人、ヴァンピィ、ヴァイト、べスちゃんの三人、掃除の師匠であるクラウディアとドロシーの二人、デリフォード、イングヴェイ、タヴィーナの三人、シロウ、マリエ、ロボミの三人、スツルムとドランクの二人、ゼヘク、ダーント、ムゲン、ミュオンの四人――合計で四十二人追加。
この三日の間で白紙の魔術書に登録された人間は、マナリアからの総合計は八一人に達していた。
その夜。
「あらあら、ちゃんてば凄いわねー。間に来てくれた星晶獣のメドゥーサ達や天司のサンダルフォン達を入れればもうすでに百人超えてるけど、彼らはユーステスの除外条件に入ってるからそれ除いても八十人達成してるわ。この調子なら、百人達成できるのもすぐじゃない」
「そうだな。これでシエテの十天衆かすでに来て登録してくれたマキラを除いた十二神将達とも都合がつけば、一気に百人超えるんじゃないか。僕も正直、がここまで皆から慕われているとは思わなかったよ」
「は武器も魔法も扱えずとも、色々と凄かったんだなー」
これにはロゼッタだけではなく、グランとビィも感心した様子だった。
艇の会議室にグラン、ビィ、ルリア、イオ、カタリナ、ロゼッタ、ラカム、オイゲンが集まっている。
カタリナはグランの方を見て、十天衆と十二神将の近況について聞いた。
「それで、肝心の十天衆や十二神将達は明日にでも来てくれそうか?」
「それが、今回に限って何か忙しいみたいで、シエテやウーノはまだしも、あの中でイルザと同じくを妹扱いしているエッセルと彼女についているカトルは連絡しても今はすぐには来られない、エッセルとカトルだけじゃなくて、と友達になってくれているソーン、シス、サラーサやニオ達もすぐには無理だって言われた。彼ら以外にもどういうわけか、マキラを除いた十二神将達も同じように忙しそうだったな。唯一、艇に来てくれるマキラにそれ聞けば、ほかの皆さんの事情は分かりませんの一点張りで、ちょっと彼女の様子がおかしかったのも気になるな……」
グランは参った様子で、カタリナにそう返事をした。
「皆さん、を思うならすぐに来てくれそうなんですけど、実際はそうもいかないみたいですね……」
「十天衆や十二神将の凄さって、こういう時に分かるわね」
ルリアとイオは改めて、十天衆と十二神将達の実力を実感する。
因みにはファスティバ達と一緒にほかの団員達をもてなしている最中で、此処には不在だった。
会議室での議題は、の白紙の魔術書についての近況報告である。
現時点で一番最初に疑われたカリオストロ、マギサ、アルルメイヤ、レイといった空の民の魔術師達の疑惑は晴れ、同時に、疑いやすい星晶獣と天司の仕業も除外されてしまった。
その報告を聞いて頭を抱えるのはグランだけではなく、カタリナ達も同じだった。
「しかし、メドゥーサやサンダルフォン達での白紙の魔術書の犯人が星晶獣や天司ではないと分かって、これまた面倒な話になってきたな……」
「ですねえ。にこれ送り付けてきたの、いったい誰なんでしょうか……」
「ジル教授が言ってた星晶獣や天司以外の第三の何かであったとして、それを送り付けてきたのが団長やあたし達じゃなくて何でなのか、それだけ、気がかりよね」
カタリナは慎重な姿勢を崩さず、ルリアもこれには不思議そうで、イオも犯人の目的が分からないと首をかしげるばかりだった。
「ジル教授の言う第三の何かが何であるか、思いついたんだが」
と、ここでラカムがすっと手をあげた。
「その第三の何かというのが月の民の末裔達の仕業はどうか? あいつら、カシウスだけじゃなくて組織のユーステスを狙ってるからそれでその彼女であるも狙われたんじゃないか」
「それは無いだろう。月の民の末裔の仕業ならカシウスかアイザックが反応してるだろうがそれが無いし、あいつらの得意分野は魔術というよりシロウのとこと同じ科学技術じゃなかったか。それだからあいつらの仕業であるならに魔術書じゃなくてロボットとか機械兵器を送り付けてくると思うが」
「それもそうか。星晶獣も違う、天司も違う、月の民の末裔達でもない、それじゃそれ以外の第三の何かって何だよ」
「俺に聞くなよ、俺がそれ知ると思うか」
ラカムは手をあげてその思いつきを話すもオイゲンに完全に否定され、第三の何かも分からないままだった。
「星晶獣でも無く、天司でも無く、月の民の末裔達でも無い、第三の何かか……。まさかね」
「お、グラン、何か心当たりあるのか」
ラカムとオイゲンのやり取りを聞いていたグランはそれ以外の第三の何かに心当たりがあるようで、腕を組んで考え込む。そのグランに期待を込めた目で見つめるは、ビィである。
「いや。僕でもジル教授の言う第三の何かについては何も分からない」
グランはビィに聞かれるもそれには答えずそれについて考えるのを止めて、そこから話題を切り替えるように言った。
「振り出しに戻った今、犯人捜しよりも、がどうやってユーステスと関係を修復できるかを考えた方がいいと思う。ルリア、イオ、皆の記憶が戻ってからのの様子はどう? 団の皆と上手くやってる?」
グランは団長らしくを気にして、その様子をルリアとイオに尋ねる。
「はい。団の皆さんの記憶が戻ったは、皆さんと上手くやっていますよ。ただ……」
「ただ、何だい? 今言える事は、今に言った方がいいよ」
ルリアは最初はそれを言うかどうか迷っていたがグランの優しさに触れて決心したよう、グランに向けて報告する。
「ただ、昔のと違ってぼーっとしてる時が多くなってる風に思います。私との星晶獣の勉強も上の空で私の話を聞いていない事が多くて、食堂でもいつもは皆さんの注文間違えないのに間違ったり、お掃除のお師匠さんのクラウディアさんが指定した場所も掃除していなかったりで明らかに前のと違ってます……」
「ああ、それ、あたしも気にしてたのよ。ちらほら、ほかの団員からもの様子がおかしいって報告きてるわ。いつものコルワとメーテラ達だけじゃなくてルナール達からも、と話しててもいつもの明るさがなくて自分達に遠慮がちでつまらないって。、どうしちゃったのかしら。あたしも皆の記憶が戻れば、犯人捜ししなくても、いつものに戻れるって思ってたんだけど……」
ルリアとイオの報告を聞いたグランは参ったよう頭をかいて、隣に居るロゼッタと顔を見合わせ言った。
「多分それ、の記憶が戻ってもそばにユーステスが居ないせいじゃないのか。そのせいでの中で矛盾や違和感があって、色々手につかなくなってると思う」
「そうね。前のちゃんはこの艇でもユーステス一番で張り切ってたから、それがなくなった今、何をやるにも前のようにはいかなくなったのよ。これ、犯人捜しより深刻だわ。さてこの問題、どうしたらいいかしら……」
ロゼッタもグランと同じく、参った様子で腕を組み考える。
と。
トントン、と、控えめにドアが叩く音がした。
グランは腰を浮かせて「どうぞ」と、ドアに向けて声をかける。
「団長さん、大事な会議の時に申し訳ないんだけど、ちょっとお話し、いいかしら」
ドアが静かに開き、そこに現れたのはファスティバだった。
「ファスティバ一人とは、珍しいな」
普段、食堂で何かあれば彼らと話しやすいを引き連れてくるファスティバだったが、を引き連れてではなくファスティバ一人の登場にグランは、慎重な態度で尋ねる。
「もしかしてに何かあったのか?」
「ええ。ちゃんの事でお話しがあるの。会議で団長さんとルリアちゃんのほか、カタリナ達が揃ってるなら丁度良いとも思って。実は……」