――お互い、身分を隠した状態で知り合ってたら、どうなってたのかな。
夜。
星穹列車内、丹恒の資料部屋にて。
は仙舟の勉強、丹恒は部屋に備わっているパソコンでアーカイブ整理をしていた時、からそう話しかけられた。
丹恒はアーカイブ整理の手を止め、怪訝な顔でに応じる。
「どういう意味だ、それ」
「いや。時々、思うんだよ。丹恒とは、私が故郷のディアンで第二王妃だったから、それが縁で国王陛下の任命で護衛役でついててくれて、そのおかげで、ここまでの関係になれた。それじゃあ、私が第二王妃の身分を明かさず、国王陛下も丹恒を私につけず単独で調査しろって言われた場合、ここまでの関係――、この資料部屋に呼ばれるまでの関係になれてたかなーと、この資料部屋でアーカイブ整理してる丹恒の後ろ姿見て思ってさ」
丹恒はの話を聞いたうえで少し考えて、言った。
「……そうだな。俺があの時、中庭で肉まん食べてたの所にテレポートしてそれを目撃したお前に騒がれ、その騒ぎを聞きつけて現れた国王からお前が第二王妃だと教わらなかったら、それが縁で国王が俺をお前につけなかったら、その後にお前の国王の間に子が生まれればクロムとディアンの人間を総入れ替えするという野望を聞かなかったら、夜の中庭でお前が現れなかったら、ここまでの関係にはなってないな」
「ち、ちょっと、ここまでになる要素が多過ぎない? 丹恒が私とここまでの関係になったの、星核目当てに国王陛下の第二王妃の護衛に任命されて、その私に興味持ったせいじゃなかったの?」
「俺は多分、がただの第二王妃なだけじゃ、ここまでの関係になってないし、興味も持たなかっただろう。ここまでの要素というか、が第二王妃でその見た目通りに大人しい女かと思えばその裏は実は大食いで酒飲みで雑で国王をあざむくほどの野心の持ち主、ここまで面白い女、宇宙でも中々見ないって思ったのが、お前に興味持ったきっかけだったからな」
「……そう。それじゃ、第二王妃じゃなくても私のそういうとこ見れば、ここまでの関係になれてた?」
「……、やけにつっかかってくるな。ステーションかほかで、俺との関係、誰かに何か言われたのか?」
「別に、誰に何も言われてないけど……」
「けど、何だ」
「けど、こうやって丹恒の資料部屋に呼ばれるたび、そこでアーカイブを整理するその後ろ姿を見るたび、無能力で無資格、おまけに戦う力を持たない面倒な私でいいのかって思っちゃって……」
「――」
のその不安は、丹恒にも伝わる。
は続ける。
「別の自分――例えばさ、例えば、私が開拓者みたいに戦う力あって何でもやれる万能な女だったら、同じく何でもやれる万能な丹恒と一緒に居られる理由としては十分だよね」
「……、が開拓者のよう、何でもできる万能な女であれば、反対に俺と一緒にならず、俺以外の男に目がいってそいつと付き合ってたかもな」
「そう?」
「、故郷ではディアンの国王だけじゃなくて、ほかの貴族や王族達とも付き合ってただろ。がもし、開拓者のような女であれば、国王のもとへ嫁がず、無難にそっちにいって、星核目当てにディアンに来た俺とも出会ってなかっただろうな」
「そうかなあ。故郷で貴族や王族と付き合ってたといっても、中々、思うようなイイ男、居なかった気がする。それだから、最終的にディアンの国王陛下のとこにいったんだよ。私が開拓者のような万能な女でも、故郷ではそこ、変わらないと思う」
「そうか。それなら、この宇宙ではどうだ? 宇宙では俺に出会わなかったら、俺以外にもお前が目移りしそうな男、けっこう居ると思ったが」
「この宇宙で丹恒以外にイイ男……、例えば?」
「……」
数秒考えて、返事があった。
「例えば同じ応物課の温明徳課長とか、エイブラハムとか、ネットエンジニアのレオナードとか、ステーション内でも色々候補は居る」
「んー。温明徳課長もエイブラハムもレオナードもイイ男で間違いないと思うけど、引っかからないなあ」
「ヴェルトさんはどうだ。ヴェルトさん、宇宙で一番いい男だぞ」
「ヴェルトさん、既婚者で子持ちじゃなかったっけ。そこは、遠慮したいんだけど」
「おいおい、お前がそれ言うか。まあ、空想上の議論だ、そこ、関係無しでいいだろ」
「はは。それアリなら、ヴェルトさん悪くないけど、自分とあわないかも。ヴェルトさんみたいな真面目で博識な人、雑な私にあわせてくれないと思うよー」
「それもそうだな。ヴェルトさんは雑なとあわないか」
丹恒は、のそれには大いに納得した。
続けて、候補者を探す。
「宇宙で雑なお前にあわせてくれる男というと……、ヤリーロ・Ⅵのジェパードはどうだ? あいつ、好みのイケメンで騎士の中の騎士だから、雑なお前とあいそうな気はするが」
「ふむ。ヤリーロ・Ⅵのジェパード、いいかも。丹恒の言うように見た目、私好みのイケメンで最強の騎士様だし、雑な私にもあわせてくれる優しさ持ってるし」
はヤリーロ・Ⅵには行った事はないが、上層組のジェパード達とは、この列車内で開拓者を介して紹介された事があった。中でも同じお嬢様でお姫様のブローニャとは気があい仲良くなって彼女についているゼーレとも話ができるようになり、ジェパードの姉のセーバルとは同じく酒好きが判明し、ヤリーロ組はの良い飲み友達になってくれた。
因みに地下組織のナターシャ達は紹介されず、まだ顔もあわせていなかった。
丹恒はジェパードはの反応が良かったので、期待する。
「お、ジェパードで決まりか?」
「いやでも、ジェパード相手にするとなれば彼のお姉さんのセーバル相手にしなくちゃいけないんじゃない? セーバルに認められないとジェパードと付き合えないとか」
「あ」
「セーバルだけじゃなくて、妹のリンクスも家族愛というか、お兄さんへの愛が強そうで、自分が認める女じゃないとジェパードの相手も認めないって反対されそう~。あそこ、兄弟多いから、彼と付き合うのに、それ以外のほかの家族の同意を取るのも面倒じゃない?」
「確かに。あの家族愛を乗り越えられる女じゃなければ、ジェパードの相手は難しいか」
「ヤリーロ・Ⅵのジェパード、いい線はいってたんだけどねー」
ヤリーロ・Ⅵのジェパードは最強の騎士で見た目も好みで相手として申し分なかったが、彼の場合、姉のセーバルと妹のリンクス、それ以外に兄弟が多く、おまけにその家族愛は強いようで、彼らの家族愛を乗り越えなければその付き合いは難しいと思った。
丹恒もの意見と同じでヤリーロ・Ⅵのジェパードは諦め、次の候補者を出した。
「それじゃ、仙舟の雲騎軍の景元将軍はどうか」
「あー。仙舟ガイドで仙舟の雲騎軍の景元将軍は仙舟でも一番人気のイケメン将軍でその中でも最強クラスってあって、写真付きでその美しい顔のってたのは見てるから、候補としてはアリかも」
「うむ。仙舟の雲騎軍の将軍として器も大きい景元将軍であるなら、雑なともあいそうだ」
丹恒は、仙舟の雲騎軍の景元将軍であるならの相手に申し分ないと、自信を持って胸を張る。
しかし。
「いやでも、この私と仙舟の雲騎軍の景元将軍、どこで知り合えるの? それこそ、丹恒か開拓者が一緒じゃないと、景元将軍と話すらできないんじゃない? 丹恒と開拓者達はその力を示すだけで良かったけど、実際、普通の民間人が景元将軍本人に会うためには、様々な試練を乗り越えないといけないとかあるでしょ」
「ああ、そういう問題もあるか。確かに普通の民間人が景元将軍本人に会うには様々な試練を経てからで、無能力で無資格なではそもそも、軍の将軍クラスと会える資格が無いか……」
ふむ。丹恒は、出会いも含めて、この宇宙でにあう男が居るのかと、真剣に考えている。
「同じ雲騎軍の彦卿は景元将軍と違って出会いは簡単そうだが、年齢的に無理か。星核ハンターの刃……は、一番有り得んな。あいつと、絶対あわないだろ」
丹恒は彦卿はまだしも、星核ハンターの刃は絶対ににあうわけがないと、最初からその候補から外した。
「となれば、ステーション内部かこの列車内で相手を探すしかないが。ほかにステーションか列車内で雑なにあう候補者は……」
「……」
うーん。これは丹恒も難しい問題のようで、考える時間が多い。
ところ、で。
「――ステーションか列車に限定するなら開拓者の男版、とか」
「!」
ぼそり、と。遠慮がちに呟いたの言葉に、丹恒は。
「ふはっ」
堪えきれず、噴き出した。
「は、はは、開拓者の男版、その可能性は思いつかなかった。確かに開拓者の男版であればお前好みのイケメンで銀河一最強になるだろうし出会いも簡単、はは、雑なお前とも一番あいそう、しかし開拓者の男版て、はは、それアリか?」
「そこまでウケる?」
は自分は思い付きで言っただけだったのが、丹恒にはツボだったようで腹を抱えて笑う始末だった。
「開拓者の男版アリだと思うよ。開拓者の男版がアリなら、『なのか』の男版もあるし、更に更に、丹恒の女の子バージョンだってアリでしょ」
「止めろ、それ以上は混乱する」
はー。丹恒は笑うのを止めて、その代わりに溜息を一つ吐いた。
「この宇宙でにあう男が開拓者の男版もアリなら、誰も敵わん」
「そうね。まあ、私も開拓者と同じように何でもやれる万能な女であるのが前提だから、もし、開拓者の男版が存在しても無能力で無資格、何もできない私なんか相手にしないと思うわ」
「そうか? 開拓者の男版であれば、のそこも気に入って相手にすると思ったが。現在の女の開拓者も、のそこは全然気にしてないと話してたぞ」
「どうかなー。でも私も開拓者の男版が私を相手にしてくれそうなら、開拓者相手に攻めていくかも。あそこまでイケメンで万能で最強なな男、宇宙でも中々居ないでしょ」
「だろ。開拓者の男版と、けっこう、お似合いなんじゃないか」
「ねえ、本当にそう思う?」
「本当にそう思うから、そう話したつもりだが」
「それなら、私を捕まえてるその腕、外してくれない? ちょっと苦しいんだけど」
「あ」
丹恒は話している最中に後ろからを捕まえ、彼女が逃げないよう、その腕にしっかり収めていた。
は空想議論を続けている間、後ろから抱き着いてずっと自分を捕まえて離さない丹恒に、くすくす笑いながら、話した。
「丹恒て、言ってる事とやってる事、いつも違うわね。そういうとこ、ほんと、子供ね」
「うるさい。今までのはが俺と出会わなかったらの話だ、今は俺と出会って俺がついてるからは俺のもので間違いないだろ」
丹恒はに子供と評価され不機嫌そうで、しかし、彼女からは離れない。
は丹恒の機嫌を取るために彼の顔を触りながら、話した。
「まあ、私がどんな状態でもどこかで丹恒と出会えば、丹恒の方にいくの確実かもね~。ここまで強くて雑な私にもあわせてくれるイイ男、中々居ないもの」
「うむ。この宇宙でも雑なにあわせられるの、俺だけだな」
のそれだけで丹恒は、あっさりとその気を持ち直したのだった。
丹恒は言う。
「しかし、開拓者の男版か……。ライバルとしては強力過ぎるな。俺の前に開拓者の男版が存在しなくて良かったというか、ここでは女で良かったというか……」
はは。丹恒はのそれで機嫌を持ち直すも、やはり、開拓者の男版には敵わないと思った。
は少し考えて、言った。
「私、現在の開拓者が女の子で良かったと思うわ」
「そうなのか? の場合、銀河一最強でイケメンになるだろう開拓者の男版の方が良いと言うと思ったが」
「私からすれば女の子の開拓者の方が話しやすいし、この宇宙では丹恒だけじゃなくて、ほかにも色々相談出来るから、彼女の方があってる」
「なるほど。話しやすくて色々相談出来る現在の女の開拓者の方が、にあってるな」
うん。丹恒は、の話を聞いて、大いに納得した。
と。
「開拓者が女の子で良かった理由、それだけじゃなくてほかにもあるんだけど……」
「それだけじゃなくて、何だ?」
「うん、まあ、これは、私の余計な妄想かもしれないから、あまり気にする事ないかも」
「何だ。言いかけて止めるなんて、反対に気になるんだが」
「ええと、男の開拓者だったら、仕事だけじゃなくて私生活でも四六時中、丹恒にベッタリな気がして、丹恒の恋人の私としては複雑かもって話」
「はあ、開拓者が男だったら、そこまで俺にベッタリになるか? 男同士だぞ」
「だから、妄想上って言ったの。現在の女の子の開拓者は、私に遠慮してか、いい距離感保って丹恒に接してくれてるから、そこらへんの心配ないけど。男だったらそのへん分からず遠慮なく、私を無視して、好きな時に好きなだけ丹恒に向かっていくんじゃないかな、と」
「……なるほどなあ。そこも女と男で差が出てくるのか」
丹恒は、妄想上とはいえそれは男女の違いでそれはあるかもしれないと、の観察に感心を寄せる。
そして。
「まあ、結局は想像上の話だからな、そこまで深く考えるものじゃない」
「そうそう。結局は丹恒だけなんだから、そこまで考えるのは止めた方がいいわね」
想像上とはいえ、けっこう生々しい話だったのでそれを払しょくするよう、丹恒は強い力でを抱き締め、も丹恒にゆだねるよう彼の腕の中に収まり、お互いそのぬくもりを確かめ合う。
ところ、で。
「あーでも、開拓者の男版、もしこの宇宙の技術で実現できるなら見てみたいかも。きっと、開拓者の男版、ステーションでもそれ以外でもどこでもイケメンだって認められてるよねー、しかも銀河一最強になるの決まってるから、競争率高そう~」
「……」
の呟きを聞き逃さなかった丹恒は、それから、彼女を手放す事はなかったという――。
その想像だけの話をした影響かどうか――。
その夜、世界はA→Bへと移動し、移動した人間はその事実に気が付かなかった。
B世界、星穹列車、丹恒の資料部屋にて。
「丹恒、来たよー。あ」
「あ」
が丹恒に呼ばれて彼の資料部屋を訪ねれば、そこに居座っていたのは丹恒ではなく、開拓者――しかも、髪を短くした男の開拓者であった。
この世界では開拓者は男として認識されていて、も当然のように男として接している。
その男の開拓者は、丹恒の寝床でだらしなく、寝そべった状態だった。
はその開拓者を嫌なものを見るような目で、見下ろしている。
「……何で、丹恒の資料部屋に開拓者が居るの?」
「俺がこの資料部屋に居たって、別にいいだろ。俺は、丹恒の親友なんだから」
ヒヒ、と、開拓者は、困惑するを前に、意地悪く笑う。
は開拓者の現状を見て、呆れながら言った。
「ちょっと、そこ、丹恒の寝床じゃない」
開拓者は丹恒の寝床に寝そべった状態で片手に手持ちの端末でゲームをしつつ、辺りは資料と思われる書類や本が雑に散らかり、悲惨な状態だった。
「もー、そこ、そんなに散らかさないでよ。丹恒が困るでしょ」
「丹恒は、俺が散らかすの、別に気にしないってさ。むしろ、俺が資料を床に散らかすおかげで、見当たらなかった資料が見付かる、資料整理がはかどるって言ってくれたぞ」
「嘘でしょ。丹恒は私には、本一冊でも片付けてないと、元に戻せってうるさいんだから」
「あら、それじゃ、俺だけ特別扱い?」
開拓者はここで、の方を振り返った。
目の前の開拓者は男が羨むほどのイケメンで、女が羨むほどキラキラしていたのだった。
「丹恒に特別扱いされるのは、悪い気しないね」
「……」
丹恒の話をそう解釈して笑う開拓者と、それを見ないようにそこから顔を逸らすと。
はここで、肝心な事を開拓者に聞いた。
「……ねえ、肝心の丹恒、どうしたの? 私、丹恒に呼ばれて来たんだけど」
「さあ。俺が此処に来た時は不在だったけど」
と。
「、悪い、待たせた――て、開拓者、お前も来てたのか」
自動ドアが開いて慌てた様子で入って来たのは、丹恒本人だった。
はその丹恒を見てほっとしつつ、聞いた。
「来てたのかって、丹恒、開拓者と約束してなくて、ここまでやられたの?」
「ああ、またこれか。開拓者、手に取った資料や本は元に戻せと、昨日、指導したばかりじゃないか。仕方ない奴だな」
が丹恒に寝床で散らかして寝そべる開拓者を指させば、丹恒は呆れる風に散らかる本を片付け始める。
その丹恒に対してはいまだに手伝いもせずに寝そべったままの開拓者を指差しながら、訴える。
「ちょっと、丹恒、開拓者に甘過ぎない? 片付けくらい、自分でやらせなさいよ」
「開拓者、今までヘルタの模擬宇宙にほかの仲間達と潜ってたんだ。それで、それ以上に疲れてるから……」
「あれ、丹恒、開拓者のそれと一緒じゃなかったの?」
「俺はその間、別の仲間達と別の所の調査隊に同行してたからな、開拓者ほどじゃない。を呼んだはいいが、それの事後報告に手間取ってた」
ふう。丹恒は溜息を吐いて、自身も疲れた様子で椅子に深く座った。
丹恒はと開拓者の顔を見て、言う。
「それだから此処でだけじゃなくて、開拓者の顔見れば、ほっとしたよ」
は遠慮がちに、その丹恒にその内容を聞いた。
「開拓者や『なのか』以外の別の仲間って、今回は、どんな組み合わせでどんな仕事内容だったの? 確か、今日の丹恒の遠征先、仙舟だったよね?」
「ああ。俺は、仙舟の雲騎軍の彦卿と素裳、卜者の青雀と符玄で、仙舟にまだ残っている異変を調べる調査に同行していた」
「あらあら。それは、お疲れ様だわ。よし、よし」
うん。は、任務で仙舟組と一緒になった丹恒の疲れはとてもよく分かると、彼を労うために子供をあやすよう、その頭を優しく撫でてあげた。
「やっぱり、遠い場所から帰った後にに触れると落ち着く……」
丹恒も遠慮せず、を引き寄せて彼女に抱き着く。
「えへへ」
は丹恒のそれを嬉しそうに受け入れていたが――。
「ちょっとちょっと、だけずるくないか!? 丹恒、俺にも抱き着いてよ!」
「は? 何で俺がお前に抱き着く必要がある」
丹恒はさすがに、急に声を上げて自分との間に割り込んできた開拓者に呆れる。
開拓者は自分の顔を指さし、丹恒に訴える。
「丹恒、さっき、仙舟の任務から帰って俺の顔見てほっとしたって言ってくれたじゃんか。俺も丹恒と同じで模擬宇宙から帰ってきて丹恒の顔見てほっとしたから、みたいに抱き着いてよ」
「それはそうだが、男同士でそれやるのはどうかと思うが……」
「ウェルカム!」
「……」
ばっと。開拓者に両手いっぱい広げてこられては、それに応じるしかなく――。
「よし、よーし、お疲れー」
「……」
丹恒は仕方なくという感じで開拓者に抱き着けば、開拓者はと同じように丹恒の頭を撫でてやったのである。
「ちょっと、私の真似しないでよ」
「いいじゃん、別に。俺と丹恒の仲だし? 丹恒も俺で癒されるってさ」
は自分の真似をする開拓者に憤慨するも、開拓者はを軽くあしらうどころかそう、挑発までしてきた。
それにカチンときたは、開拓者に負けずに言い返す。
「む、む、私の方が普段疲れてる丹恒、癒してるんだから!」
「いやいや、仕事でも私生活でも、四六時中、一緒に居る俺の方が丹恒にとって癒されてると思う」
「たまに会う私の方がいいと思う! それに丹恒、やわらかい私の方が抱き心地いいって!」
「む。それ言うなら、俺にもとから備わってる癒しの力なめんなよ! 俺の癒しの力で何度、丹恒を助けたか――」
「――いい加減にしろ」
と開拓者の言い合いを止めたのは、丹恒だった。
丹恒は開拓者に向けて言った。
「俺からすればも開拓者も同じ癒されるのは変わりないが、今回は、に癒されたくて呼んだんだ。悪いが、開拓者、今日はもう、この部屋を出ていってくれるか」
「えー。今日は俺より優先なわけ?」
「そう言ってる。俺は、との時間も大事だ」
「はいはい。邪魔者はさっさと退散しますよ」
開拓者は端末を持って、その言葉通り、さっさとそこから引き下がったのだった。
自動ドアが閉まったのを見てからは、丹恒に訴える。
「今回は丹恒が私を優先してくれたから良かったけど。何あれ、丹恒も開拓者に好きにやられてるんじゃないわよ、もう!」
「もステーションでスタッフ相手に動き回る開拓者、見てるだろ」
「見てるけど」
「その能力を買われて、ステーションだけではなく、ヤリーロや仙舟、それ以外であちこち呼ばれるあいつも色々大変だからな、そこは加味してやらないといけない」
「それ分かってるけどぉ。開拓者、私に対する態度、酷くない? 開拓者って、丹恒は自分と分かり合った親友だって、私の前で自慢してくるんだから!」
「それは間違いない、が」
「えー。丹恒も開拓者の肩持つの?」
は、丹恒が自分より開拓者を優先するのかとそれが不満だったけれど。
「話を最後まで聞け。俺と開拓者は開拓者の言う親友で間違いないが、は俺の恋人で間違いないって言いたかった」
「あ……」
「それだから今日も、開拓者よりを優先した。俺は、開拓者かか、どちらを優先するべきか分かる時はちゃんと、を選んでいる。お前もそれ理解しているのであれば、開拓者のそれくらいは寛容になってくれるか」
「……分かった。丹恒が私を思って私を優先してくれるうちは、開拓者のそれくらいどうってことない」
ぎゅうっと。は丹恒の話を聞いて、嬉しそうに、彼に抱き着く。
「ここ、座れ」
「ん」
丹恒はそのを受け入れるよう、椅子に座り直し、彼女をひざに乗せる。
そして。
「いいか?」
「うん。大丈夫」
の髪に触れてそれの確認を取る丹恒と、丹恒に誘われて嬉しいと。
丹恒は自分を受け入れてくれたの耳元で、甘くささやく。
「俺がこうやって抱きたいの、だけだから。もそれ、忘れないように」
「分かってる。私も丹恒だけ、だから」
自然と、二人の体が重なる。
はその夜は丹恒に抱かれて、とても、気分良かった。