「どうです?」
「さすがピノコニーのオーク家の当主、廃盤になった名盤が何枚も揃ってる。本当に何枚か借りていいのか」
「ええ、構いませんよ。そうだ、その中で弾けるのもあるので、今度、丹恒さんにお気に入りの盤を選んでもらって、それの演奏でもしましょうか?」
「……、自分の頭じゃ追いつかない壮大な話になってきたな」
はは。丹恒はサンデーのそれは嬉しい誘いと思うが、自分とはレベルが違い過ぎる、と、笑うしかない。
それから。
丹恒がサンデーのレコードを吟味している間、サンデーが彼に呟くように話した。
「丹恒さん、星核によってレギオンに狙われて滅びゆくだけの星からさんに目をつけて彼女一人だけをこの列車に連れて来たというのは、中々やりますね」
「サンデー、お前、無能力で無資格のただの人間の女には興味無いとか言ってたじゃないか、急にどうした」
丹恒はレコード選びに夢中でサンデーの顔を見ないで、彼の話に応じる。
「今回、開拓者とさん本人から、さんの事情を聞いて、彼女に興味持ちましてね。千年遅れた世界から、丹恒さんの手でこの宇宙まで来るというのは、中々にロマンチックだと」
「あの時は開拓者も三月もまだ現れなくて、俺一人でレギオンの襲撃を受けている最中で、そこから一人を連れ出すだけで精一杯だったからな。サンデーは、そういうのに興味あったのか」
「ピノコニーの芸術家の間では、その手の話は、好まれます。映画や演劇でも、身分違いで親に反対されて叶わぬ恋だとか、別の星を舞台にした遠距離恋愛の題材が流行っていました。ワタシもそれ系の曲をリクエストされる事が多かったですね」
「……なるほど。しかし実際は、映画や演劇のようなロマンチックな話じゃなかった。あそこまでの体験はもう、懲り懲りだ」
「そうですか。しかし、よく、単独でさん一人だけをそこから連れ出せましたね。その世界では、彼女が城の関係者であるのが良かったのでしょうか」
「そうだな。が城の関係者であった事が、彼女だけを宇宙への誘導に成功したのは認める。ただの町娘であったら、そこまでできなかった」
が実は故郷では、政略結婚で第二王妃として君臨していた事実は、いまだに、開拓者と『なのか』に話していない重要な機密事項である。
のその事実を知るのは現時点で、丹恒、姫子、ヴェルト、ヘルタ、アスターだけ。
開拓者と『なのか』は、は故郷で王族に仕える学者の一族で城に勤務して、そこで星核目当てに国王に会うために城に来た丹恒と知り合ったという話を疑わず、彼女と接している。
では、サンデーはどう出るか――。
「その件ですが。開拓者とヴェルトさんはその話について納得している風でしたが、しかしワタシでは、さんは故郷では学者の一族で王族に仕える身分として城に務めていたのでその時に星核の調査に来た丹恒さんと知り合って恋人関係まで発展した、それに関して少し疑問が残るのです」
「どういうわけだ」
「ワタシ、さんはそれ以上の階級の人間ではないかと見ているのですが。さんはそれこそ、王族の人間でその中でも中心人物ではないかと。さんが王族の人間であるならば、星核目当てに城に来た丹恒さんと自然と、密な関係が築けるでしょう」
「どうして、そう思う。は、お前の言うよう、無能力で無資格のただの人間の女だ。それが王族の一人だって? 冗談でもきついぞ」
はは。丹恒は作り笑いを浮かべ、サンデーと向き合う。
サンデーは表情変えず、丹恒にそのわけを話した。
「先ほどの所作の話です。さんの美しい佇まい、作法や所作――、それらは生半可なもので習得できるものではありません。
ワタシもピノコニーではオーク家の当主候補としてそれなりの教育を受けていて、そこでは、ほかの星の王族関係者と接する機会が何度かありましてね。彼らの洗練された美しい所作は、代々、その道を行くのが決められている者だけが習得できるものです。
オーク家であれ、拾われて養子となってその場繋ぎの簡単な教育を受けただけのワタシとの差は、確実にありましたね」
「……」
「さんは産まれた瞬間からその手の訓練と教育を施され、代々、城に行くのが決まっていたような――そういう、特別な女性でしょう。そうなれば王族に仕える側ではなく、王族そのものである、という方が納得いきます。丹恒さんは、さんのそこ、気が付いていましたか?」
「……、俺ではのそれはよく分からない。彼女は無能力で無資格であっても開拓者や三月と変わらない少女で、代々、城に行くのが決まってるような特別な女には見えないが」
「そうですか。それ以外、ワタシは王族関係者以外でも、スターピースカンパニーの高級幹部以上の権力を持つ上層部との知り合いが多くて、彼らと何度か取引をしていましてね。
丹恒さんは、ピノコニーの開拓に関しては途中からの参加でしたが、ワタシのオーク家について知っていますか」
「……」
丹恒は最初は前回の仙舟でその疲れがまだとれていなかったせいで、星穹列車に届いた『時計屋』と名乗る人物からのピノコニーの救助要請を受けてそれに応じた開拓者の開拓の旅に同行する気はなかったが、レンジャーのブートヒルの登場により、開拓者とヴェルト達が危機的状況に陥っていると分かり、それを助けるため、途中からピノコニーに入った次第である。
丹恒はうなずき、サンデーに自分の事を話した。
「俺はサンデーの言うようにピノコニーの開拓の旅は途中参加だが、開拓の旅が終わった後、サンデーはピノコニーで名門のオーク家の当主であるが、実際は拾われた養子であるという話は、開拓者やヴェルトさんから聞いている。
そして、オーク家の成り立ち、サンデーとその前当主がピノコニーの裏で何をしていたというのも、アーカイブで確認済みだ。
それから、ホテルについた時に開拓者や姫子さん達に接触してきたカンパニーの高級幹部のアベンチュリンの最終目標が、サンデーの所だったというのもね。そのアベンチュリンはサンデーとやりあい、返り討ちにあったようだが」
「ふふ。あれはピノコニーでは一番、苦い思い出です。彼の渾身の一撃がなければワタシはピノコニーの裏を知らされず、今でもあの席に座っていたかもしれませんね」
「……」
どこまでが嘘で、どこまでが真実か。サンデーの曖昧な感じはピノコニーの時と変わらないなと、丹恒は思った。
サンデーは言う。
「まあ、それらの思い出は、丹恒さんのアーカイブに記録されていると思うので、省きます。
ワタシが言いたいのは、ワタシもそのオーク家の当主として、カンパニーの上層部とも色々、取引してたんですよ。で、そのカンパニーの上層部から、面白い話を聞いた事がありまして」
「……何だ」
「宇宙科学も知らない文明レベルの低い星から一人のお姫様が、星核調査に来たカンパニーの調査員を騙し、彼の宇宙船を使ってレギオンに蹂躙される故郷の民を置いて一人、宇宙に逃げ出した――、これはカンパニーにとっても、カンパニーが信仰する星神にとってもルール違反で周辺の星の歴史まで変えるほどの参事だ、と」
「――」
「知り合いのカンパニーの幹部はその星から宇宙に逃げたお姫様を追いかけているようですが、中々捕まえられないと嘆いていましたね。もう一つ面白い話があって、そのお姫様は星核調査に来たカンパニーの職員といい関係になって、お姫様を星核でレギオンに目を付けられた星から宇宙に逃がしたのも彼の仕業で、その彼に匿われているとか。
それが本当ならこれ以上にロマンチックな話はありませんし、妹のロビンであるなら素敵な歌にしてくれた事でしょう」
「……、サンデーはもし、そのお姫様の居場所が分かれば、彼女をカンパニーに売るのか?」
「いえ。ワタシはお姫様の居場所が分かっても、彼女をカンパニーに売る真似はしませんよ。ワタシは現在はカンパニーに追われている身ですし、ピノコニーで彼らにやられたぶんは今でも覚えていますから」
「……」
丹恒は目を閉じ、何か思案しているようだった。
そして。
丹恒は目を開け、サンデーを真っすぐ見詰めて聞いた。
「サンデー、お前、ピノコニーではオーク家の当主として、数々の権力者達とやりあってきたんだよな。その中に、カンパニーの上層部の連中だけではなく、ほかの星の王族関係者も居たと」
「ええ、はい。その件に関して、何か疑いでも?」
「いや、別に何も疑っていないが。そのお前の目には、はどう見えるかなと、思って」
「どう見えるとは、どういう意味でしょうか」
「は、お前の目から見てもいい女かどうか、聞いている。あいつの無能力で無資格な部分も込みで」
「……、そうですね。さんは無能力で無資格であっても、美しい女性で変わりありません」
「そのはこの星穹列車内や、ヘルタ・ステーションの狭い世界に居るより、外に飛び出した方が、今以上に輝けると思うか」
「……」
今のサンデーでは、丹恒の話の意図は読み取れなかった。
それでも。
「どう思う?」
「はい。さんほどの女性であるなら、狭いステーションに居るよりは、外の世界に飛び出して見聞を広めた方が、今以上に輝けると思いますよ。それだから、さんをこの星穹列車内や、狭いステーションに閉じ込めているのは、もったいないと思います」
「そうか。サンデーもやはり、そう思うか。うん。あいつと同じ境遇のサンデーからそれを聞けて良かった」
「……」
丹恒はサンデーからそれが聞けて、本当に安心したよう、胸を撫でおろした。
それから丹恒は落ち着いた様子で、サンデーに打ち明ける。
「俺とは現在、カンパニーの上層部の連中の監視下にある。お前の聞いた話とは、そこが違うな」
「丹恒さん」
「この件、開拓者と三月には、黙っていてくれないか。此処でこれについて知ってるのは、姫子さんとヴェルトさんだけだ」
「了解しました」
サンデーは丹恒に、しっかりとうなずく。
そして。
「サンデー。このレコード、借りていいか」
「ええ、構いません。返却はいつでもいいですよ」
丹恒は一枚のレコードをサンデーに見せた。
サンデーは丹恒のそれが自分はもう、それ以上は話す気はないと言っている風に聞こえ、応じる。
「ありがとう。今夜、部屋でと聴いてみるよ。良ければまたいい時にでも、に向けて演奏してやってくれないか。あいつもああ見えて裏では、お前と同じように色々背負わされ、孤独を抱えている」
「はい。さんとの来訪、お待ちしております」
「それじゃあ」
丹恒はレコードを抱え、静かに部屋を出て行った。
残されたサンデーは、ピアノを見詰めながら、の言葉を思い出している。
――それも、私と同じ! 私もそういうのが嫌になってそこから逃げだして、丹恒に助けてもらったんだよ!
「確かに同じ、ですね。ピノコニーから逃げたワタシの境遇と、その星から逃げたさんの境遇は、同じ……」
それから、丹恒の言葉も。
――あいつもああ見えて裏では色々背負わされて、孤独を抱えている。
「……」
そして、ピアノを見詰める。
「このロマンチックな話、ピノコニーに残っている妹のロビンに聞かせれば彼女は、さんの丹恒さんに対する思いを代弁するような詩を書き、それを美しい声と曲で歌にして、さんまで届けてくれるでしょうけれど。
そのロビンの美しい歌をさんに聴かせてやりたいものですが、果たして、それが叶う日がくるかどうか……」
サンデーは、妹のロビンであればの丹恒に対する思いを代弁するように歌にしてくれると思ったが、生憎、彼女とは決別したばかりでそれは叶わなかった。
「せめて、ワタシの曲が孤独なさんに届くように――」
サンデーは、宇宙科学も知らない文明レベルの低い星から丹恒に連れられてこの宇宙まで逃げてきたを思うよう、鍵盤にその綺麗な指を走らせるのだった――。
余談。
「丹恒さん、ある楽曲に関する資料を借りたいのですが――」
サンデーはノックもしないで、丹恒の資料部屋を開けた。
ところ、で。
「――」
サンデーは、丹恒の寝床でが布団をかぶって寝ている所に遭遇し、固まった。
因みにこの時のは、ちゃんとステーションの制服を身に着けていた。仕事終わりの来訪で、肝心の丹恒はまだ姿を見せないしで、横になれば今までの疲れが出たのか、そのまま寝てしまった次第である。
「……ええと」
サンデーは、そのをどう扱っていいか――、彼女を起こすべきかどうか、迷う。
「……」
サンデーはとりあえず、丹恒が不在であっても構わず、自分の欲しい資料を探してみるかと、彼女を起こさないように本棚に近付く。
そうでも視線は、本より、寝ているに向けられる。
「……」
無能力で無資格であれ、寝ている姿も美しい、と、評価するのは彼女だけではなく、丹恒にも失礼になるのかどうか。
おまけに、の寝顔を見ていて、気が付いた事があった。
「さんはどこか、妹のロビンに似ていますね……」
ロビン。サンデーの実の妹であり、彼女は恵まれた容姿と優れた才能を持ち、ピノコニーでは歌手として絶大な人気があった。
現在のロビンは兄のサンデーと決別し、新たな道を歩んでいる。
「……」
サンデーは屈むと、おもむろにに手を伸ばした――ところ、だった。
「!」
「!」
慌てた様子の丹恒が部屋に飛び込んできて、それを阻止したのだった。
丹恒はサンデーを見ないで、呆れた様子で言った。
「サンデー。お前も開拓者と同じ、勝手に入るタイプだったか」
「すみません。音楽に関する資料が欲しかったものですから」
「資料は好きにしていいが、俺のに触れるな」
「……」
丹恒はサンデーの前であっても構わず、寝ているを大事そうに抱える。
そして。
「、起きろ」
「……丹恒? お帰りー」
丹恒がの体を揺さぶればは半分だけ目を覚ました状態で、しかし、丹恒の姿を見れば遠慮なく彼に抱き着いてきた。
そして。
「お帰りのチュー」
「待て、今はそれは出来ない」
はいつものように丹恒にキスをせがむも、丹恒はのそれを拒否した。
当然のよう、から不満が出る。
「えー。何でいつもの、出来ないの? 臭いものでも食べてきたとか?」
「そういうわけじゃないが、今はしない方がいい」
「丹恒は、私が嫌になったの?」
「が嫌になるわけないだろ」
「それじゃ、いつものして」
「いやだから、できないって」
「何でー。はっ、まさか、浮気?! ほかの女に手出したの!? そんな、私以外の女に触れてきたというのであれば、ここでお別れよ!」
「違う、俺は以外の女に触れてきたわけじゃないし、それくらいでと別れる気はないからな! 、俺を疑う前に周りをよく見ろ!」
「ふぇ?」
いつものキスをしてくれない丹恒にが涙目になってそう訴えれば、丹恒は額に手を置いて参った様子でにサンデーの居る方を示したのだった。
そして――。
「どうも……」
「ぎゃあああっ!」
の仕業に困ったように笑うだけのサンデーと、サンデーに気が付いて顔を真っ赤にして丹恒から離れて絶叫するの姿がそこにあったという。
「あらあら。サンデー、と丹恒のあれ見たんだ?」
「あらあら。と丹恒のあれ、サンデーも見たんだ」
夜の食事時、食堂にて。
開拓者、なのか、姫子、ヴェルト、サンデーの五人は、パムに出された食事を堪能しているところ、丹恒と、サンデーの間で何があったかを聞かされたのだった。
開拓者と『なのか』は、と丹恒のあれを目撃したサンデーを面白そうに見ている。
「はは。それで今回、丹恒はと列車での食事はキャンセルして、二人でステーションで食べる事になったのか」
「全く。列車の正式なメンバーになればどこかであの二人のあれ目撃する羽目になるから、さっさとにサンデーを紹介したかったのよね」
サンデーから丹恒との話を聞いたヴェルトはステーキを食べながら笑うしかなく、姫子もワイン片手に呆れた様子だった。
「でもサンデー、良かったね。と丹恒のあれ見たなら、もう列車組として一人前だよ」
「うんうん。と丹恒のあれ見たサンデーはもう新入りじゃなく、立派な列車組だよ!」
「そ、そうなんですか?」
開拓者と『なのか』に力強く言われたサンデーは戸惑いを隠せず、ヴェルトに助けを求める。
ヴェルトは肩を竦めて、言った。
「うん、まあ、丹恒とのあれは列車組の間では、通過儀礼の一部になってるんだよ。二人のあれ見てそれに慣れたら一人前っていうのは、列車組の共通認識だねえ」
「そうだったんですか。そうなら、嬉しいですね。まあ、ワタシもあの丹恒さんが、さんとあそこまでの関係を持っていたとは、思いませんでしたよ」
ははは。丹恒とのあれはサンデーにとっては衝撃的だったらしく、力なく笑うしかなかったという。
ここで開拓者は身を乗り出し、サンデーに向けて聞いた。
「というかサンデー、丹恒とのあれ見て未だに引き気味なの、潔癖症なの?」
「いえ。そういうわけではありません。ピノコニーの映画や演劇では、その手の恋愛劇は数多くあって、ワタシも演奏家として恋愛系の曲を弾いていた時期があったほどですから、それの免疫はあるかと」
「それじゃあ、何でそこまで引き気味なの?」
「似ている、と、思ったんです」
「似ている? 誰が誰に似てるの?」
「さん、ワタシの妹に似ていると思いまして、それで彼女と妹を重ねて見ていまして……」
「――」
サンデーの言葉に、場に居る全員が静まる。
「サンデーの妹というと、ピノコニーで歌手やってるロビンだっけ。ロビンと、似てた? とロビンの雰囲気は似てると思うけど……」
「ああ、、誰かに似てると思ったら、それだわ!」
最初、開拓者はサンデーのそれにピンとこなかったが、『なのか』はそれに理解した様子で、手をあわせた。
開拓者は落ち着いた様子で、『なのか』に注目する。
「なのは、サンデーのそれに納得してんの?」
「うん。、ロビンだけじゃなくてさ、ヤリーロのクラーラとかペラとか、あの系統の顔じゃない? 仙舟では素裳とかフォフォとかが、まさにそれ系」
「ああ、は確かに、それ系の顔だな。星核ハンターのホタルとかもそれ系か」
「そうそう。星核ハンターのホタルもそれ系! ウチ、長い間、は何かに似てると思ってたんだけどそれ分からなくてモヤモヤしてたとこにサンデーのそれで、ようやく腑に落ちた!」
きゃー。『なのか』はサンデーで長い間のモヤモヤが晴れた気がして、嬉しそうだった。
ヴェルトはその『なのか』を尻目に、サンデーに問い質した。
「それで、を妹のロビンさんと重ねてる兄のサンデーさんの立場からすれば、と丹恒のそれは色々複雑ってわけかい?」
「まあ、そうですね。それは否定しません。ただ……」
「ただ?」
「ただ、妹のロビンもさんと同じく、丹恒さんのような、イケメンで最強な部分はもちろん、知識豊富で博識な殿方が相手になってくれればいいなという願望もあったりします。さんと丹恒さんは、まさしく、劇の題材になりそうな理想のカップルなんですよ」
ひといき。
「ワタシの不在の間、妹のロビンにへんな虫がつかないかどうか心配で、心配で。できるなら、さんの丹恒さんを射止めた話を聞かせてやりたいくらいです」
ここでヴェルトは姫子と顔を見合わせ、そして。
「ロビンさんの相手がと同じ、丹恒くらいの男がいいとなると……、今のところ、兄のサンデーさんくらいしか居ないんじゃないか?」
「ふふ、そうね。サンデー、あなたも丹恒と同じく、イケメンなのはもちろん、最強で博識だものね。ずっとあなたを見ていた妹のロビンはその目が養われていて、兄のあなた以下の男は相手にしないでしょうから、そこ、心配しなくていいわよ」
「そうですか。お二人からそれ聞いて、安心しました」
サンデーはヴェルトと姫子の話を聞いて、本当に安心した様子だった。
ここで『なのか』が身を乗り出し、開拓者に向けて明るく言った。
「ねえ、そのロビンの新曲、聴いた? めっちゃ良かったんだけど!」
「あら。あれから、ロビンの新曲出てたの?」
「うん。ロビンの新曲、列車でもそこのラジオで流れてたし、ステーションのスタッフ達の間で、話題になってたよ。ピノコニーの歌姫、復活って。もロビンの曲をダウンロードして、丹恒と一緒に聴くって、嬉しそうだったよ」
「そうだったんだ。それは全然知らなかった。もロビンの曲をダウンロードしたなら、私もあとでダウンロードして聴いてみるよ」
『なのか』の話を聞いた開拓者は、好奇心だけで、サンデーを振り返る。
「サンデー、ロビンの新曲、聴いたの?」
「ええ、一応。彼女の活躍はこっそり、追いかけているつもりです。相変わらず美しい声で、安心しました」
「良かったね、お兄ちゃん」
「はい」
サンデーは開拓者に肩を叩かれ、嬉しそうだった。
そして。
「ああそうだ、ロビンの新曲とワタシが星穹列車の列車組に認められたそのお祝いに、この列車内でちょっとしたコンサート、やろうかと思うんですが、どうでしょうか。もちろん、さんもそれに特別招待したいのですが」
サンデーは少し緊張気味に、開拓者、なのか、ヴェルト、姫子の顔を見回し、そう提案してみた。
その途端、だった。
「賛成!!」
大きな拍手と歓声が、食堂に響き渡ったという――。