つまり。
「……つまり、ヘルタを頼ってスターピースカンパニーの高級幹部を介して上層部の一人と接触、どうにかしての故郷のデータをヘルタのデータベースに追加できないかと直談判しにいけば、とある惑星の鉱山に巣食う魔物退治を私や『なの』の協力なしで、単独で引き受けてくれたらそれ受け入れると言われたと?」
「そういうわけだ。俺はこの二、三日、カンパニーの指示で指定の惑星の鉱山に滞在して、現地の人間達と一緒になってその魔物退治を引き受けたんだ。今日でその大変な任務が終わって、それがカンパニーの連中に認められ、ヘルタのデータベースにの故郷の言語が追加され、ようやく、共感覚ビーコンにもの故郷の言語データが適用されたわけだ」
丹恒はの状態が通常に戻ったと分かった後、いったん、開拓者と共に星穹列車に戻った。
星穹列車では開拓者だけではなく、なのか、姫子、ヴェルトも集まっている。
丹恒は言う。
「その星の鉱山の魔物退治で、この二、三日の間、一人で千匹くらい相手にした」
「一人で魔物千匹!?」
「うわ、一人でそれやってたの? マジで?」
開拓者と『なのか』は丹恒からその仕事内容を聞いて、驚きを隠せなかった。
「丹恒、大丈夫?」
「大丈夫。俺の体力ばかな部分は、もよく知ってるだろう」
開拓者だけではなくも、丹恒はいつもより疲れているのが分かって、彼の手を握る。丹恒も人目も気にせずを引き寄せ、腕の中に収める。
なのかは興味深そうに、丹恒に聞いた。
「ねえ。そこはレギオンじゃなくて、魔物だったわけ?」
「そうだな。反レギオン軍であれば、開拓者や三月の協力がなければ一人では無理だっただろう。カンパニーの上層部の連中は、魔物相手であれば、俺一人でもいけると思ってくれたのかもしれない」
「でも何でカンパニーの上層部の人間、丹恒に単独でそこまでしないとの故郷の言語データ追加できないって言ったの? それ、おかしくない?」
「だよね。それ、私も思った。丹恒がそこまでしないとの故郷の言語データ追加できないって、カンパニーの上層部の連中、何様のつもり?」
「それは……」
『なのか』だけではなく、開拓者も、丹恒にそこまで課したカンパニーの上層部の人間の仕業に憤る。
現時点で『なのか』と開拓者は、何も知らなかった。丹恒との間でスターピースカンパニーの上層部から課せられている試練の内容を。
その中でも星の歴史を狂わすほどの異端児とみなされた、の異質さを。
「――それは多分、カンパニーの中ではの故郷に関して、そこまでの価値がなかったせいじゃないかしらね」
「姫子」
『なのか』と開拓者に鋭い部分をつかれてどう答えていいか分からない丹恒に助けを出したのは、その裏事情を知っている姫子だった。
姫子は落ち着いた様子で丹恒の代わりに、『なのか』と開拓者に向けて説明する。
「前提として、の故郷はカンパニーの管轄外、更に宇宙科学も知らない未開拓で辺境の地だったから、ヘルタのデータベースにその言語データが無かったのよ。カンパニーも星核があってもの故郷は価値がないとみなして、今までほったらかしにしてた。で、今回、ヘルタのツテで丹恒に直談判されたカンパニーの上層部の人間は、そこまで言うならその価値を上げてみろ、それができないのであれば、似たような星でその力を示せと、丹恒に迫ってきたんでしょ」
「そう、姫子さんの言う通りだ。の故郷は宇宙科学も知らない未開拓で辺境の地だったためにカンパニーの中で価値がなく今までほったらかしで、そこまで言うならその価値を上げるか、それができないのであれば、似たような星でその力を示してみろとカンパニーの人間に言われてね。鉱山に巣食う魔物を撃退できればそれが金脈になり、カンパニーに貢献できると。俺は、星の価値を上げられるような経営者としてのノウハウは持ってないので、単純に力を示せる魔物退治に参加したわけだ」
――姫子さん、ありがとう。丹恒は姫子の機転に感謝しつつ、補足を話した。
「なるほど。それで丹恒は今まで一人で、のために頑張ってたのか。やるじゃないの!」
「これはウチも素直に丹恒を称賛する。よくやったわ!」
ぱちぱち。開拓者と『なのか』は丹恒の頑張りを知って、拍手を送る。
「ヘルタも、に共感覚ビーコンが適用しないのは、ステーションにの故郷のデータが無いせいだとは気が付いてたの。それで、カンパニーにステーションにもの故郷のデータを追加してくれと訴えればなんとかなるんじゃないかと話してたんだけど、ヘルタ個人でそれをやるには無理な話でね。その中で丹恒、本当、よくやったわよ」
「そうだな。ヘルタはよっぽどの事がない限りステーションから移動できないし、個人のためにその労力は使わないだろう。そういう時こそ、我ら、列車組――ナナシビトの出番だろうが、俺達はまだかろうじて開拓者やロボット達であれば通じる個人のためにわざわざそこに赴く義理はないと考え、そのまま放置していた。
これは、の恋人である丹恒でなければ、できない仕事だった。俺もその丹恒を称えたい、よくやった」
姫子とヴェルトも、のためにそこまでやってのけた丹恒を称える。
は丹恒からその内容を聞いて胸がいっぱいになり、人目も気にせず、彼の首に腕を巻き付けて言った。
「私も丹恒が私のために、ここまでやってくれるとは思わなかった。ありがとう。とても嬉しい」
「からの賛辞が一番効き目あるな」
はは。丹恒は列車の乗組員達よりも、のそれの方が頑張った甲斐があったと思って、笑う。
そして。
「さすがに疲れた。二、三日、休む。通信も切ってオフライン状態にするんで、その間、も開拓者と三月達に任せるが、いいか」
「了解。ゆっくり休め! その間、は私達が見てるから心配しないで」
「ウチも同じく。丹恒はも何も心配せず、ゆっくり休んでね」
丹恒の申し出を聞いた開拓者と『なのか』は、胸を張って了解する。
「私、丹恒のおかげで開拓者だけじゃなくてステーションの皆とも会話できるようになったから、丹恒が休んでる間はステーションの方に居るから――て、何?」
も丹恒に休んで欲しくて彼から離れてそう告げるが、それを引き止めたのは丹恒だった。
「その、しばらくと触れ合ってなかったから、長い眠りに入る前に、に触れたいと思ってるんだが」
「ほんと?」
にはっきりとそれを要求してきた丹恒と、丹恒の要求が何か分かって素直に喜ぶと。
「現時点での都合がつかないというのであれば、目が覚めてからでも――うわっ」
「丹恒なら、いつでも相手してあげる! こういう時こそ、私の出番じゃない。そこ、遠慮しないで」
ぎゅうっと。は丹恒に誘われたのが嬉しくて、しっかり彼と腕を組む。
「やっぱり、遠征任務があった後は、と一緒に居るのが落ち着くなぁ」
「私もどこでも、丹恒と一緒がいいよ」
えへへー。は浮かれた気分を隠さず丹恒とぴったりくっついた状態で、二人は、彼の資料部屋へと消えていった。
「何だよ。結局、丹恒一人がいいとこどりかぁ」
「だねー。ウチらも言葉が通じないのため、ヨウおじちゃんとのミニキャラスタンプ作ったりとか、色々やってたのにさぁ」
丹恒がを連れて資料部屋に入ったのを見届けてから開拓者と『なのか』は、その不満をヴェルトと姫子に向けて吐き出した。
「まあ、まあ。二人とも、不満を言うには丹恒との裏事情を知ってる姫子から事の詳細を聞いてからにしようじゃないか」
「あら、ヴェルトは私のそれ、気が付いてたんだ。やるわね」
開拓者と『なのか』の不満を聞いたうえで二人をそう宥めるのはヴェルトで、ヴェルトからそれを見抜かれていたと知った姫子は笑うだけだった。
ヴェルトは言う。
「この間、列車内でのためにカンパニーと交渉するのにあまり乗り気じゃなかった丹恒炊きつけたの、姫子だっただろ。姫子は、をどうにかできるのは丹恒だけと思ったから、丹恒にあの時の話、したんじゃないのかい?」
「そうね。丹恒にあの時の話を聞かせたのは、彼にのためにそこまでする価値はあると、それ、分からせるためだった。丹恒でなければ、カンパニーの上層部の連中と交渉したうえでのの故郷の言語データ追加は不可能だったでしょうからね」
「ねえ、ヴェルト、姫子がのために丹恒炊きつけるのであの時の話したって、何それ、どういうわけ。ヴェルトと姫子、私と『なの』にその話したのであれば、その真相、教えてくれるんでしょうね」
「そうだ、そうだ。ウチと開拓者もそれ、知る権利あるでしょ!」
真相を知っているらしいヴェルトと、それについて笑うだけの姫子を見て、のけ者にされたようで面白くなかった開拓者と『なのか』は、揃って声を上げる。
「それは、もちろん。開拓者と『なのか』も、丹恒の手でがこの列車に初めて乗った時の話を知る権利はあるというか、それについて知っておいて欲しい内容だ」
「ええ。私とヴェルトはアンタと三月ちゃんにそれについて教えるつもりで、この話を持ち出したの。時間はたっぷりあるからそれ、聞かせてあげるわよ」
それから姫子は、開拓者と『なのか』に向けて反対に聞いた。
「ねえ。開拓者と三月ちゃん、が故郷を手放してまで、この宇宙に残った理由、知ってるかしら?」
「が故郷を手放してまで、この宇宙に残った理由? それは、同じく宇宙に残る丹恒と一緒になりたいからじゃないの?」
「そうそう、それ以外、が故郷を離れて宇宙に残りたい理由、ないよね!」
姫子はこの時、の裏事情――第二王妃で既婚者である事を隠したうえで、開拓者と『なのか』にがどうして故郷を手放して宇宙に残ったのか、その理由を聞いた。
開拓者と『なのか』は、が宇宙に残ったのは丹恒以外に有り得ないと、即答だった。
「そうね。私も最初、そう思ったわ。は丹恒と一緒になりたいがために故郷を手放してまで、宇宙に残る決心をしたんだって。でも実際は、それと違ってたの」
「え、実際はそれと違ってた? どういうわけ?」
「もったいぶらないで、教えてよ、姫子ぉ」
開拓者はわけが分からず、その時を思い出したのか笑う姫子をつつくのは、『なのか』だった。
――過去、星穹列車にて。
丹恒の手で宇宙に停泊する星穹列車まで連れて来られたは、姫子に向けてそのまま宇宙で保護して欲しいと訴えたのである。
それを聞いた姫子は、驚いた。
『は? 宇宙に残って、ステーションに保護してもらいたい? アンタ、それ、本気で言ってるの?』
『本気で言ってる』
『……、アンタ、自分の故郷では、政略結婚とはいえ、第二王妃様だったんでしょ。第二王妃とはいえ、国を背負うその立場で責任放棄して、故郷捨てる気?』
は、故郷では第二王妃という、その国では中心的な立場だった。姫子はそれで故郷を捨ててまで丹恒を選ぶとは、倫理的にどうなのかとは思った。
は胸に手をあて、言う。
『言っておくけど、私は故郷を捨てる気ないわ。今でも故郷を愛して、できるなら、こんな暗くて冷たい宇宙の中ではなくて、故郷のディアンのお城で死にたいくらいだから』
『それならどうして、ステーションでの保護を選んだの? ステーションの保護を選んだ場合、いつ故郷に帰れるか――生きているうちに故郷に帰れるかどうか、分からないわよ』
『ねえ。さっきから肝心のあの人――丹恒の姿が見えないけれど、彼といつ、もう一度会える?』
丹恒は姫子にを預けてから何分か経つが、それ以降、からではその姿が見えなかった。
姫子は溜息を吐いて、厳しい口調でに話した。
『は宇宙に残っても、丹恒と二度と会えないわ。彼はもう、あなたを保護する責任はないし、この列車に乗って銀河を旅する自由なナナシビトに戻るだけだから』
『姫子さん、もう一度聞くけれど私はこの列車のナナシビトとかいう乗組員にはなれず、あの人と一緒の旅は不可能なのよね?』
『そうね。無能力で無資格のアンタは、この星穹列車に乗る資格無いわ。それだから、丹恒と宇宙に関する記憶を消した状態で故郷に戻って処刑を待つか、ヘルタ・ステーションで保護されるかどちらかを選べと、最初に提示したんだけど』
姫子はに二択を迫るさい、無能力で無資格なは宇宙に残っても列車に乗れず、ナナシビトとして旅を続ける丹恒と一緒にはなれないと最初から伝えている。
はしかし、姫子にわずかな期待を込めて聞いた。
『それでも、ヘルタ・ステーションとやらに残れば、丹恒と会える可能性は残ってる? 私、故郷で丹恒は、列車だけじゃなくて、そこでも何かやってたっての聞いてるんだけど』
『……それは否定できないけど。何、アンタ、丹恒に本気で惚れたの? 第二王妃で既婚者という立場で? もしそうなら、レギオン相手にできてどこでも重宝される丹恒は無能力で無資格のアンタの相手にならないし、アンタも丹恒とはその場限りの関係だと割り切ってると思ったけど。
それに、アンタが故郷を捨ててまで丹恒を追いかけたところで追いつけないし、相手にされず泣いて終わるだけだから、彼を追いかけるのは止めた方がいい――』
――ガンッ。姫子はそれ以上、何も物が言えなかった。がヒールを脱ぎ、列車のテーブルをそれで叩いたせいだった。
その時のはレギオンと民衆の襲撃で髪もほどけて炎にあてられススだらけでボロボロだったけれど、かろうじて、ドレス姿だった。
は姫子の前でも構わずにヒールを脱ぎ、そのなんともいえない感情をテーブルにぶつける。
姫子は見た目だけは大人しそうだと思っていたの仕業に、目を見張った。
目を見張る姫子に構わず、は叫ぶ。
『――私はもう一度アイツに会って、こうして一発殴らなくちゃ気がすまないのよ! 私が第二王妃で既婚者の立場というのが分かってるくせに、私もアイツにそれちゃんと伝えたのに、先に強引に手を出してきたのは、あっちでしょうが! それで何で私ばかり、責められなくちゃいけないの!』
『――』
『そもそも、アイツが星核目当てに私のディアンに来なければ、私もこんな目にあってないわ! 大人しく、その責任取って処刑を待ってたわ! でもね、此処まで来たからには――アイツと関係持ってそれで宇宙に来たからには、その記憶を消される前に、アイツを一発殴らなくちゃ気がすまないし、私に先に手を出したくせにその責任取らず、アイツだけのうのうと旅を続けるのは我慢ならない!』
ガン、ガンッ。ヒールを振り回してテーブルだけではなく、壁にもぶつける音だけが、響く。
『何よ、ロクに説明もせずにほったらかしで、自分だけ勇者気取りでカッコつけちゃってさあ! どうせアイツ、私が此処に来た時点でその技術に震えて、自分や宇宙に関して記憶消されたうえで現地に戻されてそれで関係終わり、自分は何も責任取る必要無いって思い込んでるんだろうけど、おあいにくさま、そこまでバカな女じゃないっての! 記憶消される前に一発殴って、それから、たんまり慰謝料もらって故郷に帰って処刑された方がスッキリするわ!』
ガン、ガン、ガンッ!
『わけがわからないステーションとやらに残った所で――、私も宇宙に残った所でお父様やお兄様と同じくそれに耐えられずに狂って死ぬかもしれないけど、そこでタダで死ぬわけないでしょ、死んでもアイツを呪ってやる、呪って、呪って、百年苦しませてやる! 星核に関する仕事終われば記憶消されるからいいだろって感じで強引に第二王妃様の私に手を出したの、後悔させてやるんだから! この、このぉっ!』
ガンッ、ガンッ。は椅子やテーブル、壁に自分のやりきれない思いをヒールを持ってそれをあちこちぶつけて回って暴れて、暴れた。
姫子はこの時、違和感の正体――、の裏の顔を知ってしまったのである。
しかし姫子はあまりの事に一人では、暴れるを止める事ができなかった。
と。
騒ぎを聞きつけた車掌のパムが、の暴れる様子を見て驚く。
『姫子、何事じゃ、いったい何が――うおっ、なんじゃ、姫子もボケッとしてないで、彼女を止めんかー!』
『そ、そうね、ここは、私と車掌さんでを止めた方がいいわ!』
姫子は、車掌のパムの登場で我に返り、パムと二人で慌てて暴れるを止めに入った。
暴れるを宥めるのに、姫子だけではなく車掌のパムも手を焼いたという――。
――現在、星穹列車にて。
「うわ。、故郷で自分と関係持ったのはいいけど、その責任取らず、星核に関する任務が終われば自分と宇宙に関する記憶消して終わりだろって感じでほったらかしにしてた丹恒に怒ってキレて、姫子とパムでも止められないほど暴れて、それで仕方なく、ヘルタ・ステーションに保護されたんか……」
「いやでも、ウチもの気持ち、分かるかも。現地で関係持ったのに、自分の仕事が終わればその責任取らずに記憶消してあっさりお別れなんて、それ、ないわー」
姫子から星穹列車に来た当時のの丹恒に関する怒りと暴れっぷりを聞かされた開拓者はのそれに引き気味だったが、『なのか』はのその気持ちは分かると丹恒のやり方に引き気味だった。
「そうそう。私も三月ちゃんと同じ気分でに同情したから、のそれを受け入れるように彼女をステーションに置いたのよ。ステーションについてからヘルタとアスターにもそのわけ話したら二人とも爆笑して、そのあと、丹恒と再会できるまで彼女をステーションに置いてもいいっていう判断が下されたの」
はは。姫子は、ステーションでがヘルタとアスターの二人と面会を果たした時の様子も思い出し、笑いを堪えていた。
姫子は、自分と関係を持ったのにその責任取らずに逃げている丹恒を殴りたいというの事情をヘルタとアスターに聞かせれば二人は爆笑、彼女を面白そうに見て話した。
『いいわね、私も現地で関係持ったのにその責任取らず逃げ回ってる丹恒殴るために此処まで来たっていう、気に入ったわ。ここで、何も知らないバカな丹恒に一泡吹かせてやりな。私もアイツのレギオンに対応できる力持ってるからそれで何があっても姫子任せで、その責任取らなくていいっていう無茶なやり方、気に入らなかったのよ。ふはは、このステーションで見た時のアイツの顔が見ものだわー』
『そうね。ステーションでも護衛としてよくやってくれている丹恒には悪いけれど、現地の女の子に手出しておいてその責任取らず、簡単にその時の記憶消しておしまいっていうのはよくないわ。にはその時、一発だけじゃなくて、二発、三発、いえ、それ以上、丹恒をボコれる用の強力な武器、貸してあげる。そこ、遠慮しないでね!』
ふふふ。ヘルタとアスターは、責任逃れの丹恒を殴るために宇宙に残ったを称え、丹恒と再会できるまで彼女をステーションで保護してもいいという決断をくだしたのだった――。
「それで、ステーションで丹恒と再会した時、その要望通りに彼を殴れたの?」
開拓者は興味深そうに、姫子に聞いた。
「いえ。それが応物課の倉庫で丹恒と再会した時、アスターに借りてた武器で殴ろうとしたけど、それより先に丹恒に抱き締められてその気が失せたんですってよ。その後、丹恒は私達の前で自分がステーションに残ったの面倒見るって宣言してその責任もちゃんと取ったから、その話はそれでおしまい、それ以降はアンタ達の知っての通りよ」
「はあ、と丹恒の始まり、そんな感じだったんだ。で、丹恒の方はが現地で自分と関係持ったくせにその責任取らないのはよくない、殴れるまで追いかける、それで故郷を離れてステーションに残ったっていう話、今まで知らなかったの?」
「そうみたいね。私が言葉が通じないままのをどうするべきか迷っていた丹恒にのこの話を聞かせれば驚いた顔して、それから、慌ててヘルタの所に行ったわ。そのあとすぐ、丹恒がのためにカンパニーの上層部と交渉始めたって、ヘルタから連絡あったのよ」
くすくす。姫子はその時の丹恒の慌てぶりを思い出し、遠慮なく笑う。
「はは。丹恒からすればその時のの話は、耳が痛かっただろうなあ。丹恒は、無能力で無資格なは列車の乗組員になれず、故郷の暴動が落ち着いた頃になって、姫子の判断で自分や宇宙に関する記憶を消した状態で故郷に戻されると思ってたようだからね。いやはや、これもの戦略だとすれば、たいしたもんだ」
ヴェルトは、その話を知らなかった丹恒には同情的であり、の仕業に感心を寄せる。
そして。
「いやー。、丹恒にそれの責任取らせるために故郷を離れてステーションに残ったけど、再会した時に丹恒に抱き締められてそれができなくて今まで一緒に居るなんて、中々にロマンチックな話じゃん。それなら丹恒がのためにそこまでしたっていうの、分かるよ」
「そうだね。私もと丹恒の関係がそこまでとは思わなかったわ。そういうわけなら丹恒も、のためにそこまでしてやれるか」
『なのか』と開拓者は姫子からと丹恒の始まりを聞いて、それなら丹恒ものためにそこまでしてやれると納得したのだった。
と。
ピロリン、と、開拓者の手持ちの端末の着信音が鳴った。丹恒の資料部屋に居るはずのだった。
「お、からのミニキャラスタンプきた。何、これ、が毛布抱えて寝てるイラストのお昼寝スタンプ? あ、丹恒、思ったより早く寝ちゃったのか」
「ウチにも同じのお昼寝スタンプきたよ。あれでも、開拓者だけじゃなくて、ウチらの間でもと言葉通じるようになったのに、自分のミニキャラスタンプ使う?」
なのかは、言葉が通じるようになったのに自分のスタンプを使うに疑問を持った。
なのかの疑問に答えるのは、のスタンプを描いたヴェルトである。
「は自分のミニキャラスタンプ、相当気に入ったんじゃないかな。それは列車組限定スタンプだが、から何か要望あればのミニキャラスタンプ、追加してみるか。ああ、だけじゃなくて、なのかと開拓者も要望あれば今なら新しいスタンプのリクエスト、受け付けるよ」
「ウソ、ヨウおじちゃん、ほんと? ウチも追加して欲しいウチのスタンプあったんだよね、やったー!」
「私も、私も! 今のだけじゃ、物足りなかったんだよ」
ヴェルトはスタンプ制作にやる気を見せ、それを聞いた『なのか』と開拓者は、両手をあげて喜んだ。
そして『なのか』は、ヴェルトのやる気を見て、開拓者に提案してみた。
「ねえ、開拓者。が早めに丹恒の資料部屋から出て来たら、また開拓者の部屋で女子会やろうよー」
「お、いいね。今度の議題は、何にする?」
「ウチと開拓者との、ヨウおじちゃんに追加して欲しいミニキャラスタンプ会議!」
「了解! あ、丁度、が丹恒の部屋から出て来た。!」
なのかの提案でミニキャラスタンプ女子会決定したところで、が丹恒の資料室から出て来た。
そのを開拓者と『なのか』が取り囲み、三人娘が笑いあう様子を姫子とヴェルトが見守る。
そうして彼女は、宇宙は暗くて冷たいだけの世界ではない事を知るのだった――。